miya akiko architecture laboratory

 

まなざしの建築

自身の存在を意識させる対他存在

小口 真由

 

現代社会では深刻な孤独が社会問題となっている。この問題は周囲との関わりの希薄さに よる孤独感だけでなく、「私は今ここにいる」と自分自身の存在を意識することが出来なくなることによる、身体と意識の結びつきから生じる充実感や幸福感の不足も関係している。 この現象に対して、建築の視点で自己の存在に意識を向ける為に何が可能なのか、サルトルの存在論を取り入れて研究を行った。空間に対する感情移入を通じて自己の存在を想像し、 自分に向けた自らのまなざしが生じることで、ひとり対他存在を生み出す仮説を立て、中心 視野と中間周辺視野が捉えるものの差による感情移入の影響を研究し、視野と建築、まなざしの相互関係を明らかにした。

一住戶で完結するひとり対他存在や共有部分を介した他者からのまなざしを感じることによる対他存在に加え、都市から建築を見た際に生じるまなざしも重視し設計した。開口のある壁を交差させ、対他存在も一人対他存在も感じられるよう建築を構成する。先が見えすぎず、かつ人の居場所にもなるよう壁を 750mm でるように交差させ、部屋の真ん中に居る ときに視野 50°が一つ目のフレームに触れる 3400mm を基準として門型の壁を配置している。自分の住戶内でのまなざしだけでなく、他者とのまなざしを生むため、2 つ先に見える空間が外部にも向かうようゾーニングを行った。

周囲の建物や、住戶同士のまなざしを考え、ずれながら積層させ、人通りのある道に対してはプライバシーを考慮し壁がちな印象を与え、敷地の内部になるにつれてまなざしが滲みだす。壁や中庭に集まる自らのまなざしは、他者にとってもまなざしとなり、建築を通じて広く重なりあう。

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