miya akiko architecture laboratory
まちにほどける混在郷
ーインフラ化する庁舎建築ー
津田加奈子
都市を歩いているとふと個人の体験の記憶を思い出したり、見知らぬ誰かの記憶に出会ったりする瞬間がある。このような都市の中で邂逅する風景は、異なる秩序が文脈を変えて混在していることにより、個人の記憶や様々な共同体の記憶が多層的に紐づいていく。
更新期を迎える庁舎は、電子化の普及により訪れる機会が減る一方、無縁仏の管理などつながりの弱くなった共同体の問題と関わっている。今後縮小・単純化していく庁舎建築に冠婚葬祭のプログラムを取り込み、様々な人生の節目におかれた人々が行き交う豊かな公共をつくることを考える。
敷地として選定した北区王子駅周辺は、自然地形や人工物により分断されており、体験の断片化がまちの捉えにくさを生んでいる。さらに駅西側に点在する北区庁舎は築50年以上が経過し、建替計画が持ち上がっている。そこで既存の分棟庁舎の改築、駅ロータリーの拡張、新庁舎の増築を計画する。王子駅周辺の体験の断片をひろいながら人の動きに呼応する曲線状の道でつなぎ直し、立体的に交差する約800mの風景をまちに重ねていく。
曲線がつくり出す動線の交錯により思わぬ喜びの場に居合わせ、柔らかい断絶により人々はいずれ訪れる死を無意識に受け止める。生と死が混在郷の中で共存し、人々のよりどころになることを期待する。新しいインフラとして周囲を巻き込みながらまちにほどけていく、ふくらんだ道のような庁舎の提案。
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