写真:横田 さん(左)、鈴木 さん(右)
日本女子大学では、女性が社会的・職業的自立に向けて必要な知識や技能、態度を身につけ、社会で力を発揮できる思考力と実践力を育むことを目的として、全学部共通カリキュラムである「JWUキャリア科目」を展開しています。
本特集では、「JWUキャリア科目」を7回に分けて、学生視点でご紹介します。
第4回では、現代社会学科 3年の鈴木夏陽さんに「現代ビジネスと起業」の内容と魅力を伺いました。(インタビュアー:社会福祉学科2年 横田 真帆)
起業への関心にかかわらず、キャリアの参考にできる
―『現代ビジネスと起業』の授業に関するインタビューを始めさせていただきます。
まず、どのような授業なのかを教えてください。
シラバスをメインに話しますね。
ざっくりいうと、起業にあたって、どういうテーマが社会において話題なのかを知る授業でした。今、社会ではSDGsが話題になっていると思いますが、それをきっかけにビジネスを展開していくといいよといった感じです。まずSDGsを学ぼうといったところから入って、どういう社会の構造なのか、それこそ人口オーナス(子どもや高齢者などの従属人口が、生産年齢人口を上回る状態)、人口のグラフとかもそうですし、派遣社員や契約社員といった労働形態など、起業・経営するうえで一番基礎的なことを学びます。そして、女子大なので聞くことが多いと思うのですけれど、「ガラスの天井」といった女性が昇進できない問題点とか、ジェンダーギャップ指数とかそういうものを総合的に広く学ぶのが授業の前半部分です。
後半部分では、実際の起業家の事例ということで、お話を聞きました。例えば先日はNPOのママさんネットワークの方に来ていただいて、どういった経緯で会社をおこしたのか、NPOとそれを支える株式会社をどちらもやっている方だったので、そのお話を聞いたりしました。どのようにやってきたのかお話を聞いて、自分の起業の参考にするといった感じです。
先生自身も実際に起業なさっていて、しかも結構すごいキャリアをお持ちの方でした。子育てが終わってから、慶応義塾大学の博士号を取ったそうなので、何歳になってからでも、問題なくやっていけるとか、その根底にはやはりSDGsのことがあるとお話してくださいました。
あとは、日本女子大学のOGのギタリストの方で、日本・スペインギター協会の会長をされている有名な方が来てくださって、どういう自分のキャリアがあって、まさにキャリア科目といったような感じのお話を聞けるところが授業の特徴です。
― 詳しく教えてくださってありがとうございます。SDGsやジェンダー、社会構造のことから、NPOや起業に至るまでとても幅広く14回の中で学ばれている印象の授業ですね。 授業を受けて一番印象に残っていることはありますか。
ぬいぐるみで起業した方のお話がとてもびっくりしました。それはシラバスにはなくて、授業で出てきたお話から、急遽その方が来てお話してくださいました。
その方はぬいぐるみが本当に大好きなのですが、社会から見るとやはり30代、40代でぬいぐるみを外食の場所に連れて行って一緒に写真を撮ったりすると「痛いからやめな」と言われた過去があったそうです。そういう人たちは結構いるけれど、手を挙げられないというところから、実はぬいぐるみからビジネスのチャンスがあるのではないかなと考えたそうです。まだ今年(2022年)3月、4月くらいにできたばかりの会社です。ぬいぐるみの保育園を作ったりとか、男の人でぬいぐるみが好きだけど、好きって言えない人がぬいぐるみを家に飾ってもあまり言われないようなぬいぐるみを考えたりとか、お話をしてくださいました。みんなが幸せになるぬいぐるみの会社を作りたいということで、「ぬいぐるみを捨てられない」「ぬいぐるみの服を作ってほしい」といった悩みからぬいぐるみの企業を作ったそうです。お店をしながらぬいぐるみの保育園のプロジェクトもしていて、保育園は実際にぬいぐるみを預けることで、色々な経験をさせたいといった声から始めたそうです。この方自身もぬいぐるみが好きなので、「好きを形に」した方のお話で、結構印象的でした。
― ぬいぐるみが大好きで、起業ですか。それはすごい。確かに、ぬいぐるみが好きな人は実際に何歳になっても好きだろうし、けれどぬいぐるみに命があるものとして扱うと社会的には難しい部分もあることは事実ですしね。保育園を作るのは、さすがぬいぐるみが本当に大好きな人の発想ですね。
この授業を受けたことで、得られたことと、今後それをどう生かしていきたいかなどがあれば教えてください。
私はもともと具体的なビジョンはないですけど、起業をしたいという思いがあってこの授業を履修してみました。別にそんな大きな思いがなくても、そもそも働くことに対しての基礎的なことが学べたところが、得られたこととしては大きいです。
あと、実際にどのように起業したいか、どういうアイデアを参考に起業したか、何人かのゲスト講師の方が来てくださったお陰で知ることができました。どういうことがあって、どのように起業したかを知ることができて、真似するわけではないですけど、こういう生き方もあるんだなという意味で自分の人生の参考になったことも、得られたところかなと思います。
― ありがとうございます。確かに自分が今まで生きてきた中で出会ったことのない人たちのお話を聞けることで、新しい生き方を知ることはできますよね。私は別に起業をしたいというような思いはないのですけれど、そういう人が履修しても面白い授業ということですよね。
起業しなくても、例えばバリバリ働きたいとか、子どもを育てながら働き続けたいとか、キャリアを考える上では、女性のキャリアそのものにフォーカスした授業になっています。キャリア科目の中でもまさに合っている授業だと思います。
― 確かに、起業だけが女性のキャリアではないですね。授業全体の雰囲気はどんな感じでしたか。
たまに就活対策といった感じでグループディスカッションしたりしますけれど、基本的には座学です。
― 座学ですか。それは少し意外でした。何人くらい受講されていましたか。
30人いないくらいの授業でした。そんなに規模感は大きい感じではないです。全員が「絶対に起業してやる」といった熱意をもって授業を受けているわけではないと思います。
― そこまで多い人数の授業ではないのですね。
最後に、どんな人におすすめしたい授業ですか。
キャリアについての参考になるので、本当に誰にでもおすすめできるかなと思います。起業するとかしないとかは関係なく、そもそも働き方とかについて学べるし、SDGsとかも学べます。普通に就職される方が多いと思うので、会社に入る、社会に出るという意味では、誰が履修しても参考になる授業です。あとは、女性のキャリアに興味がある方は、実際に働いている方にお話を聞くこともできるので、おすすめです。
― この授業の授業名だけを見て、起業に興味のない自分には全く関係のない授業だなと勝手に考えてしまっていたのですが、今回授業の内容を聞いて、起業の仕方ではなく、色々なキャリアについて学べる授業だと知りました。
そもそも働き方って何だろうと考える機会は、就活が待っている人にとっては避けては通れない道だと思うので、起業に興味がある人も、私のようにない人も、SDGsやキャリア全般に関して知りたいと思う人はぜひ受講してみてほしいなと思いました。
いろいろとお話してくださってありがとうございました。
ありがとうございました。
※JWUキャリア科目「現代ビジネスと起業」は2年次以降に履修できる科目です。