こんにちは。JWU PRアンバサダーです。
キャンパス内に心地よい風が吹く昼下がり、家政学研究科住居学専攻2年の大野蓮さんにインタビューを行いました。今回、大野さんにお話を伺ったのは、本学の百年館前に広がる芝生の全面に、被服学科で不要になった布を並べてピクニックするという「IZUMI PICNIC」プロジェクトについてです。大野さんが所属する住居学科研究室の修士課程2年生を中心とした有志のメンバーが、昨年度ホームカミングデーにて開催した企画であり、ホームカミングデーに訪れた卒業生に好評だったため今年度は在学生に向けて実施しました。多くの学生が参加できるよう芝生上に大きく広げられた布は、一見不可思議な形に配置されています。 大野さんが代表を務める「IZUMI PICNIC ~未来と過去をつなぐ居場所の創出~」にこめた思いやこだわりなど、たくさんのお話を伺いました。
1.「ピクニック企画」を構想したきっかけ
きっかけは、私自身が建築や環境に対しての課題に関わっていたことです。とくに日本では「スクラップアンドビルド」という老朽化した建物を新しい施設に置き換えるという流れがすごくて。何かを作るにしても、壊すにしても、環境に与える悪い影響が大きいなとずっと思っていました。また、私は住居学専攻に所属しているので建築模型を作るときにスチレンボードという素材をよく使用するのですが、紙と発泡スチロールがくっついていて、処分するにはリサイクルに回せず燃えるごみにするしかありません。「世界をよくするために建築を学んでいるのに、その過程の段階で……」ともやもやしていました。
そうかといって、大々的にメッセージを発信することも、違う素材で模型を作るということもなかなか根本的な解決には繋がらないと考えています。もっと深い意識の部分に訴えられる方法はないかと模索していたときに、私の周りにいるクリエイティブな発想をする友人たちの力を借りて、クリエイティブと環境問題を結びつける活動をしてみようと決めました。
「ではどこを舞台にしよう?」と考えたときに、一番に思いついたのはこの日本女子大のキャンパスの中で実施すること。普段の大学生生活で、「食堂でご飯を食べなさい」
と言われているわけではないけれど、あのパンパンに人が詰め込まれている食堂でランチをする学生の姿を多く見ました。「自分が心地いいな、気持ちいいな」という感情ではない理由で動いているように感じて、「あの芝生でピクニックしない?」と提案するためこのプロジェクトを実施しました。
芝生でご飯を食べていると、陽の光や草に目が向いて自然と環境に関心を持つのではないかと思っています。
2.こだわりと思いをこめた「布」の存在
「環境に負荷はかけたくない」という思いでスタートしたのはいいものの、多くの学生にとって芝生に直接座ることは抵抗があるだろうと思っていました。レジャーシートのようなものを探す中で、 たまたま被服学科の教室の前で「こちらの布たち、自由にお持ちください」という貼り紙と箱に入った布の切れ端を見つけました。「目の前の布の量では足りないかもしれないけれど、もっとあったら使えそうだ!」と思い、被服学科の先に相談して1mほど幅がある、座るにも寝転ぶのにもちょうどいいサイズの布をいただき、切り刻んだりせずにそのまま使うことにしました。
被服学科でも制作段階で必ず「余った布」や「使えないもの」は出てくるはずです。もし仮に処分されてしまうというゴールは変わらなくても、その過程で今回のピクニック企画のような場面で「ここで役に立った」というアクションを1つでも挟むということ、用いられているものがどこから来たのか、だれに使われていたものなのかということを「知る」ことに大きな意義があると思います。自分の学科や学年の垣根をこえて何かを生み出す取り組みの可能性は、JWU PR アンバサダーの方にこうしてインタビューしていただけたことあって、今後、ますます拡大していくのではないかと感じています。
3.「空間の歴史」に対してのこだわり
コンセプトに「環境問題について考える」ということを据えつつ、ピクニック用の布の配置や場所には「空間の歴史を繋げたい」という思いがありました。
今では信じられないかもしれませんが、百年館の前の芝生のところには昔立派な校舎が建っていたんです。ホームカミングデーで卒業生の方とお話しした際に昔の校舎について聞くことは楽しくもあり、「校舎があった」という歴史がなくなってしまうのではないかという危機感も持ちました。「こんな校舎があったんだよ」という過去と今と未来を繋げる役目も果たしたいと考え、今年度の企画ではピクニック用の布を、旧校舎の教室配置にあわせて並べました。「昔はここに校舎があって、授業を受けていた学生がいるんだな」と想像してみたり、「今はここでピクニックをしているけれど将来はどのような使われ方をするのだろう」と期待してみたりする、「学生のための場所」という感覚を取り戻す時間を、ピクニックに参加した方々が過ごしてくれていたら嬉しいです。
4.さいごに
「大学を有効活用する」というのは、決してメディアセンターのコピー機を使うとか、図書館で本を借りるといったそういうことだけでなく、もっと空間全体を皆で楽しむことだと思っています。 日本女子大学は、「衣食住」はもちろん本当に広い分野を学ぶことができる場所だと感じています。そして、普段は全く違うことを学んでいても、「面白いことやりたいな、何か課題や問題に取り組みたいな」という同じ思いをもった人同士が、学部や学年を越えて集まって動いていけたらいいなと思っています。失敗してもいいから「ちょっとやってみたいな」という気持ちが一番の原動力になるのではないでしょうか。
【インタビューをしてみて 人間社会学部教育学科1年 石原愛珠】
お話を聞いていて、「世界をよくするために建築を学んでいるのに、その過程の段階で……」という大野さんの言葉に強く共感をおぼえました。私は教育学科に所属しており、自分自身が教壇に立って模擬授業を行う授業があるのですが、教材やプリントを大量に印刷して30分の授業が終わった途端「不要なもの」になってしまうことに対してなんとも言えない思いを感じていました。「将来、子どもに対して環境問題について説くような場面が有り得る立場を目指しているのに」と。ただ、模型の例にもあったように今すぐ代替できるものではありません。
「問題を解決したいのに、自分が問題を生み出しかねない」という矛盾を考えることは、苦しいことではありますが一番必要なことではないのでしょうか。世界で大きく議論されている問題・課題について「解決しよう」「どうにかしよう」と決意表明することはとても簡単です。ただ、思いを持っていても実際にどのように課題に切り込んでいけばよいかわからないという人が大半でしょう。インタビューを行うまでの私もそうでした。ですが、大野さんにインタビューを通して「課題を身近な生活から考えることこと」、「自分以外の人や場所に力を借りたいと声をあげること」の大切さに気が付きました。
日本女子大学には、学生の「やってみたいなぁ」ということに対して「いいね!」と返してくださる学生や教職員の方がたくさんいます。私自身、JWU PR アンバサダーや所属しているサークルの活動の中で何度その力に助けてもらったかわかりません。期限が決まっている大学生生活の中で、自分の思いを誰かに共有することを諦めないでいようと思わせてくれる、そんなインタビューの時間でした。