学び舎の防災を通し、共助・公助を深める

日本女子大学では、女性が社会的・職業的自立に向けて必要な知識や技能、態度を身につけ、社会で力を発揮できる思考力と実践力を育むことを目的として、全学部共通カリキュラムである「JWUキャリア科目」と、自治体や企業、研究機関等と一緒に社会課題の解決について実践的に取り組む「JWU社会連携科目」を全学部共通カリキュラムとして展開しています。
この特集では、本学の新タグライン「私が動く、世界がひらく。」にちなんだ2つの「JWUキャリア科目」と1つの「JWU社会連携科目」を全3回に分けてご紹介します。
2回目は、実際に授業を受けた社会福祉学科4年のYさんに「JWU社会連携科目」の中から「地域・企業と未来を創るクリエイティブ・プロジェクト 演習A」の内容と魅力を伺いました。 (インタビュアー:家政経済学科3年 S、英文学科3年 Y)
- 早速ですが、数あるJWU社会連携科目の中からこの科目の受講を決めたきっかけはありますか?
シラバスを見た際、本学が災害時に文京区の『妊産婦・乳児救護所』として指定されていることや、その施設の運営を文京区と連携をしながら行っていることを初めて知りました。1日の長い時間を過ごす大学では、地震に遭う恐れもあります。万が一そのような場面に直面したときに、この救護所がどのような役割を果たせるのか、そして自分にはどのような手助けができるのかと気になったのが、最初に興味を持ったきっかけです。
- 授業風景がインスタグラムに投稿されていましたよね!
授業内容の一環として、救護所施設に指定されている新泉山館で、避難所開設キットに基づいて居住スペースを設営したり、避難所の動線に基づいて張り紙を貼ったり、実際に救護所を開設してみるという、実習風景の写真が大学公式インスタグラムに掲載されています。


- それでは、授業内容をざっくりと教えていただきたいです。
まず、妊産婦・乳児救護所がどんな場所なのかという基礎的な知識を座学で学びます。その後は3〜4人でひとつのグループを作り、どのような救護所であればお母さんや赤ちゃんが安心して一時避難の時間を過ごすことができるのかといった運営方法について、複数回のディスカッションや先ほど触れた実習などを通して、さまざまな情報収集を行います。そして最終的に収集した情報をまとめ、文京区役所の防災課の方々をお招きしてプレゼンテーションするという流れです。
- 区役所の方々をお招きするとはなかなか珍しいですね!
とても新鮮でしたね。文京区役所の防災課の方々に救護所に関する新しい案を提案したり、学生の発表を評価したりしていただけるのは、とても貴重な体験だと思います。フィードバックを受けたことで、気づきを得たり、想像や理想をいかに現実的な形にするのかを再検討したりすることができました。
- 座学とグループディスカッションは比率的に見てどちらの方が高いですか?
座学は少なかったです。最初に概要を座学で勉強した後は、基本的にグループでのディスカッションや最終発表の内容について考えていきます。それこそインスタグラムに載っていたように、居住スペースの設営、重い椅子や机の運搬作業を、時間制限や力不足の中でいかにスムーズに作業を行うかといった大変さを実感する実習形式の授業もありました。
- 実習形式の授業はやはり印象的でしたか?
そうですね!実際にやってみないと机上の空論になってしまいます。私自身居住スペースに寝転んでみて、お腹に赤ちゃんがいる方や乳児を抱えているお母さん方にとって、果たして十分な快適性を提供できているのか、ストレスのある状態で寝ることなく生活することができるのか、という問題を肌で感じました。ほかにも感染症の防止やパーテーションの数量不足等、課題がたくさんあるように思います。

- グループディスカッションでは、改善点を見出したり新しいアイデアを提案したりするのですか?
その通りです。グループでどのような避難所にしていきたいか、そしてそのためには何が足りていないのかという内容を主に話し合います。私の場合だと、避難所ではストレスを感じやすいため、改善するために何をしたらいいのかという視点からアプローチするプレゼンテーションをしました。ほかのグループでは、コミュニケーションの重要性の観点から、希望参加型のプログラムを企画するといった内容を発表していました。
- グループでの活動が多いと、アットホームな雰囲気になりそうですね!
そうですね!授業外でもZoomを繋ぎながら意見交換したり資料を作ったりするので、メンバーとの仲を深められます。

- 受講後、ご自分の意識に変化はありましたか?
災害時に、本学や職員の方々、学生たちがどのような働きをするのかということに対して、ほとんど意識してなかったと思います。大学が日常の学びの場としての役割を超えて、地震発生時に妊産婦・乳児の救護所運営の支援や、その運営を通じて社会に貢献していることを知ることができたのは、とても大きかったです。また、自分たちにできることは何なのかを常に考えられるようになりました。
- ありがとうございます!では最後になりますが、受講をお勧めしたいのはどんな方ですか?
この授業では、災害下でも自分にできることがあるのだ、自分の考えを緊急時の対応に反映することができるのだ、ということを実感することができます。今後起こりうる巨大地震に備えて、人のため、社会のために何か貢献したいという意欲や、ボランティアに興味がある方はぜひ受けてみると面白いのではないかと思います。
- このインタビュー記事に目を通して本学の防災への取り組みを知っていただくことで、「大学の社会貢献」に興味を持つ方が増えるのではないでしょうか?
ぜひとも興味を持ってほしいと思いますよね。自分が通っている大学が社会に、とくに災害時にどういう存在意義を果たしていくのか、また所属する学生たちによる貢献はどのようにあるべきかを考えるきっかけになると良いですね。
- 以上でインタビューは終了となります。本日は貴重なお話を沢山ありがとうございました!
日本女子大学の学生さんで、「地域と企業と未来を創るクリエイティブプロジェクト 演習A」について関心を寄せてくださった方はシラバスを確認の上、ぜひ履修をご検討ください!
担当の建築デザイン学科平田教授からメッセージをいただきました!

ただ聞いている授業ではなく、自ら他者のために動くことができる人へと進化するスキルを詰め込んだ「社会の現場で学び、社会とともに社会課題の解決策を考える」授業をインタビューでYさんがわかりやすくまとめてくれました。大学生のお一人おひとりがもつ、他者へのやさしさ、動き出してみたい気持ちがあふれ出るのを感じる授業なのですが、それを仲間と話し合い、実践しながら客観的にまとめる、文京区に提案してみる、これが意外とむずかしいのです。でも学生のうちに、こうした苦労や失敗、成果を経験することが大切。それらが次の一歩へとつながっていくのを毎年楽しみにしています。「リーダーなんてできるのかと思ったが、やってみたらできた!」と今年の履修生が教えてくれました。