結び目と位相幾何

結び目たち 結び目たち

結び目とは3次元空間の中の絡まった輪っかのことです。結び目は3次元空間の中でフニャフニャ動かしても同じものとみなします。ただし、変形の途中で紐(ひも)をハサミで切ったり、糊(のり)で繋(つな)いだりしてはいけません。上の図には5つの結び目が描いてあります。A は自明結び目と言って、ほどけています。B の結び目は三つ葉結び目と呼ばれます。紐が途切れているように描いてある部分は交差しているひもの下側(奥側)を通っていることを意味します。B の左下の葉っぱの部分の赤い紐を持ち上げて、右上に持っていくと、C の形の結び目に変形できます。よって B と C は同じ結び目であり、C の結び目も三つ葉結び目と呼ばれます。D の結び目も E の形に変形できて、どちらも8の字結び目と呼ばれます。

ほどけるので自明結び目 ほどけるので自明結び目

複雑に絡んでいるように見える結び目でも、ほどけることがあります。上の図は Goeritz という数学者の1934年の論文に出てきますが、3次元空間の中でうまくフニャフニャ動かすと、ほどけます。太めの柔らかい紐で結び目を作って実験してみて下さい。ほどける結び目は全て自明結び目と呼ばれます。一般に、結び目の図が与えられたときに、それが自明結び目であるかないか(ほどけるかほどけないか)判定することはとても難しい問題です。ほどけることを証明するのは根気良く動かしていれば何とかなるかもしれません。しかし、与えられた結び目の図がほどけない結び目を表す場合はどうしましょう?例えば、2つ上の図の B の三つ葉結び目はほどけないのですが、一体どうしたらほどけないことが証明できるでしょう?

3彩色可能な結び目の図 3彩色可能な結び目の図

上の右側の図は 74 結び目というあまりロマンチックでない名前が付いています。三つ葉結び目の図も 74 結び目の図も、どちらも赤、青、緑の3色に塗られています。このように「上手く」3色で塗れる結び目の図を3彩色可能(3さいしきかのう)と言います。3彩色定理によると、3彩色可能な図の表す結び目はほどけません。したがって、この定理の御利益(ごりやく)によって三つ葉結び目や 74 結び目がほどけないことがいとも簡単にあっという間に分かってしまいます。ところで「上手く」3色に塗るとはどういうことでしょう?それは次の3つの条件を満たすように塗ることです。

  1. 結び目の図は交差点の下を通るところで途切れており、 いくつかの曲がった線分に分かれている。
    それらの線分の各々が赤、青、緑のいずれかで塗られている。
  2. 各交差点において、集まっている線分たちの色が3色全て揃(そろ)っているか、1色だけしかない。
  3. 結び目の図全体で2色以上が使われている。

この不可思議な定理の証明は、しかし意外と簡単です。授業の最初のほうで勉強します。さて、ところが、一番上の図の D と E の8の字結び目は3彩色不可能です。いろいろと塗ってみて下さい。どこかの交差点に集まる線分の色が2色になってしまうなど、全て失敗します。8の字結び目は実のところほどけないことが既に知られています。しかし、3彩色定理を用いたのでは証明できません。他の方法が必要です。残念ながら3彩色定理は万能ではありません。

林研究室トップへ戻る