卒業研究発表「自明結び目をほどくReidemeister変形の必要回数の上界に関するHenrichとKauffmanの論文の翻訳と解説」石田ひとみ

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石田ひとみです。
私は「自明結び目をほどくReidemeister変形の必要回数の上界に関するHenrichとKauffmanの論文の翻訳と解説」を行いました。

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この論文です。

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knot diagramが次の条件を満たすとき、そのdiagramは「Morseの位置」にあるといいます。
1.屈折した点をもたない。
2.交差点では、diagramの接線が水平線と45°の角度をなす。
3.diagramは各水平線と0個または有限個の点で交わる。ただし例外として、有限個の水平線は接点をただ1つもつかただ1つの交差点で交わる。

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論文の主定理は、
自明結び目のMorseの位置にあるdiagramは、この式の回数以下のReidemeister変形で交差点無しにできる、
ただしMは、diagramの交差点数crとdiagramの極大点の数bの2倍の和です。
結論として、論文に書いてある証明は間違っています。

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論文の証明の流れを説明します。
まず、自明結び目のn本arcのarc-presentationをexchangeとmergeによってarc2本にするときの変形回数が高々何回ですむかを評価し、
次に、exchange・merge1回が何回のReidemeister変形で実現できるか調べます。
このとき、Aの議論に誤りを見つけました。
それでは@のあらすじから説明します。

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まず、Morseの位置にあるknot diagramをレクタングラーdiagramに直し、たてarcの本数を評価します。
次に、たてarcがn本のarc-presentation全ての数を求めます。
すると、n本から(n-1)本にmergeするまでに必要なexchangeの回数が[2]で求めた数以下となり、 ほどくためのexchangeとmergeの回数が評価されます。
ここで[1]が間違っていると思われます。
[1]と先程のAは証明の最も重要な部分なので、そこを説明します。

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まず[1]のたてarcの本数の評価です。
論文では、最初にMorseの位置のknot diagramを、極大点・極小点を頂点とした傾き±1の折れ線に変形します。
次にそのdiagramを45°回転させて、たてarc・よこarcのdiagramにします。
必要ならあと90°回転させて、半分以上の交差点でたてarcがよこarcの上を通るようにしておきます。
さらに、たてarcがよこarcの下を通っている交差点については、図のように変形します。
これでレクタングラーdiagramが完成し、たてarcの本数はM本以下になります。

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しかし次に示すdiagramでは、極大点から出る傾き±1の直線分だけでは全体を実現できません。
よってこの証明は正しくありません。

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次にAですが、1回のmerge変形は0回か1回のReidemeister変形で実現できることを、論文では主張しています。

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また、1回のexchange変形は(n-2)回以下のReidemeister変形で実現できることを、論文では主張しています。

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mergeするarcたちが、arc-presentationでは隣り合っていてもレクタングラーdiagramでは両端にある場合があります。
この例の場合mergeすると矢印の右側の図のようになりますが、merge後のdiagramは1回のReidemeister変形では実現できません。
[1]とAの2箇所でうまくいかない例があるので、この証明は間違っていると思われます。

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