Seattle  文部省若手在外研究員としての派遣期間を 含めた1997年 8月末からの13ヵ月間、合州国 シアトル市にあるワシントン大学統計学部に 滞在する機会に恵まれましたので、シアトル 滞在中に参加した「統計決定理論に関する第 6回 Purdue シンポジウム」についてもあわ せて簡単な報告します。
 シアトル市は合州国北西部に位置し、人口 はおおよそ 50 万人程度の規模の都市で、近 郊にはボーイング、マイクロソフトといった 知識集約型技術の先端を行く企業があること や全米に広がったエスプレッソバーのチェー ン店とグランジロックの発祥の地として有名 です。どこかあか抜けした雰囲気を持つとこ ろで、合州国が好景気であったこともあり、 治安が非常にいいのには驚かされました。ま た、日本企業の駐在員が多く、日本の食材や 本を不自由を感じることがあまりないほど簡 単に手に入ります。
 ワシントン大学は、1861 年に設立され 100 年以上の歴史を持つ大学で、シアトル市ダウ ンタウンの北側 5 km 程のところに位置し、 ユニオン湖畔からのなだらかな傾斜地に 694 エーカーの広大な敷地を持ち、シアトル近郊 を文字通り縦横に巡らしたバス路線を持つメ トロバスでタウンタウンから簡単に行き来す ることができます。
 統計学部は 1979 年に設立された比較的若 い学部で、当初は、D. Martin、M. Perlman、 G. Shorrack の3人の教授陣であったそうで す。現在は、この3人の設立メンバー以外に J. Besage、P. Guttop、A. Raftry、 B. Stuetzle、E. Tompson、J. Wellner 等の 錚々たる教授陣を擁し、全米でもトップクラ スの高い評価を受ける学部です。教員団はヨ ーロッパ人の割合が高く、逆に中国人やイン ド人が全くいないのが特徴です。
 統計学部のほかにワシントン大学には、規 模はおおよそ2倍で、伝統もある生物統計学部 があります。それぞれの学部が主催する統計 セミナーと生物統計セミナーが月曜日と木曜 日に、秋、冬、春学期の期間開催されていま した。学部主催のセミナー以外にも環境統計 、遺伝学と統計、空間統計、ベイズ統計と いったテーマのセミナーが定期的にひらかれ ていたようです。この二つの学部は大学院生 に対する講義を共同で運営し、基本的なカリ キュラムはどちらの学部に所属していても同 じだそうで、違いは博士論文を書くにあたりア ドバイザーを自分の所属する学部の教員団か ら選択することと生物統計学部の院生は在学 中に生物学のプロジェクトに携わった経験が 要求される事などのようです。また、生物統計 学部の教員団には Fred Hutchson cancer center の生物統計学関係の教員団も参加し ているので、そこからアドバイザーを選ぶこ ともできるようです。統計学部の教育方針と して、博士論文に取りかかるにあたり、理論 と応用の両面に関して高い知識と素養を持つ ことやコンサルテングがきちんとできること を要求しているので博士号取得者は産業界か らも高い評価を受けているとのことです。
 1970 年から何年かに1度の割で開催されて きた Purdue シンポジウムが 1998 年 6 月 17 日より 23 日の期間開催されました。この ジンポジウムの期間中には、Interface of Statistical paradigms、Nutrition and Statistics、Statistical genetics and agriculture といったテーマでワークショプも 開かれていました。発表内容は 1990 年代の Annals of Statistics の傾向を反映したもの がおおく、議論の対象の統計手法は多枝にわた り、漸近論をもちいた理論研究が盛んに報告さ れていた印象をうけました。また、The IMS Bulletin No. 24, Vol. 4, page 203 -- 205 に参加者の一部の写真が掲載されているので、 ご参照ください。
 この滞在を通じて、合州国にいる統計学者は、 いろいろな統計学者と議論や討論をすることで 新しい知識を貪欲に吸収し、旬のテーマを取り 入れた内容の論文を書いていく姿勢に強い印象 をうけ、研究動向や関心の変化の早さには驚き を覚 えました。

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