自粛生活で家の中に長くいる体験をしたときに、ぼーっとしたいという思いがあった。意思とは関係なく、自然を前にするとぼーっとできるのに対して、私が家の中で窓からの景色を前にしてもぼーっとできなかったのは何故なのか、その空間環境と自身の関係が影響していると考えた。ぼーっとする時とは、今いる現実から少し離れ、自分のいる状況を自分だけの想起の世界として感じるのだと考える。窓からの景色では自由な想起が生まれず、建築の中にいながら、”今、ここ”という感覚から私を包み込む建築やその周りの一つの世界を広がりを持って想起できる状況にあることが、建築の中にいながらぼーっとできる体験を生むと考えた。そのためには建築の中での連続した経験の蓄積による空間構成の把握と空間による想起/想像の余地があることが必要だという仮説をたて、事例の研究をおこない設計提案に繋げた。壁柱を利用した二つの規模の空間構成の共存を考えることで集合住宅の新しい住戸の集まり方を提案するとともに一つの場所に留まった時に、そこに至るまでの建築内での主観的な経験の積み重ねによって自分を取り巻く建築全体の客観的な相対や自分の存在、見えない先や他者の存在を心の中で思い描くことができる住戸の提案を目指した。
森菜央
梗概
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