トマト由来の新規動脈硬化抑制化合物
○動脈硬化とは?
血管内膜下にプラークが発生して血流が悪くなる状態である。最終的に、動脈の血流が遮断され、酸素や栄養が組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる。
初期の動脈硬化病変では、細胞内に多量のコレステロールエステルを蓄積したマクロファージ由来泡沫細胞の集積がみられる。この泡沫細胞の形成が動脈硬化の発症に重要な役割を果たしていることが知られている。
ゆえに、このマクロファージの泡沫化(泡沫細胞の形成)を抑制することによって、動脈硬化の予防が可能になると考えられている。

天然物抽出エキスおよび天然物由来精製化合物からヒト単球由来マクロファージの泡沫化を阻害する物質をスクリーニングした結果、トマト果実より発見されたステロイドアルカロイド配糖体であるesculeosideA(エスクレオサイドA)のアグリコン(糖が外れた構造)であるesculeogeninA(エスクレオゲニンA)が、マクロファージの泡沫化を顕著に抑制することが明らかとなった。
○トマト新規配糖体esculeosideAとトマト新規サポゲノールesculeogeninA
ミニトマト果実より単離されたesculeosideAの含有量は1kgあたり400〜500mgで、トマトを代表する成分であるlycopene(1kgあたり60mg)よりも多い。さらに、日本で売られているトマト(桃太郎トマト、ミディトマト等)のほぼ全てに含まれていることが明らかになっている。
また、esculeosideAを酸加水分解することで、その糖鎖を切断し、esculeosideAのアグリコンである新規サポゲノールesculeogeninAが得られている。一般的に天然物に含まれる配糖体は、経口投与された後、腸内細菌の働きで糖鎖部分が切断され、生理活性物質としてアグリコンが作られて吸収される。つまり、esculeosideA は、通常の配糖体と同様にesculeogeninAに変換された後に吸収され、esculeogeninAが生理活性物質として働くと考えられている。

○EsculeogeninAのコレステロールエステル(CE)蓄積に対するメカニズム
動脈硬化の初期病変であるマクロファージの泡沫化(細胞内CEの蓄積)を抑制する天然物由来化合物の探索がなされ、esculeogeninAが強い抗泡沫化作用を示した。
CE蓄積に対する抑制メカニズムの解析が行われた結果、esculeogeninAはアセチルLDLの細胞内への取り込みには影響を及ぼさなかったが、ACAT−1およびACAT−2の酵素活性を顕著に抑制した。ACATはコレステロールの細胞内貯蔵やリポタンパクアセンブリー、ホルモン合成、コレステロール吸収において重要な役割を果たしている。つまり、esculeogeninAはACATの活性を抑制することで、マクロファージの泡沫化を抑制することが示唆された。
高脂血症モデルマウスであるapoE欠損マウスを用いた生体における効果の検討から、esculeosideAを90日間経口投与すると、体重の変化は認められないが、総コレステロール値およびLDLコレステロール値、トリグリセリド値が有意に低下が確認された。また、毒性試験からはこの抑制作用は細胞毒性によるものではないことが確認されている。さらに、esculeosideAは大動脈起始部における動脈硬化部位の面積を有意に減少させた。
これらの結果から、esculeosideAは体内でesculeogeninAに変化し、動脈硬化の進展を予防することが示されている。
現在は、トマトからesculeosideAの単離、HPLCによるesculeosideA の分析、esculeosideA高含量トマトの探索を行っております。

