飼い主の精神状態とその影響―試験期間前後における奇怪な行動から―

本稿は、飼い主しおりの試験期間前後における言動の傾向を分析し、そこから明らかとなる心理状態に着目することで、我々ペットにもたらされる影響を考察するものである。はじめに、本稿の考察対象であるしおりの現在の状況について以下にその概要をまとめる。

しおりは、日本女子大学日本文学科3年次に在籍する人間♀である。1998年に生まれ現在21歳(人間の平均寿命を80とすれば、その4分の1を過ぎたところ、即ち、我々の年齢に換算すると10歳前後に相当するであろうか)である。現在3つのテスト、並びに4つのレポートの提出を終えたところであることは以前本人から直接耳にしたものであるが、他にも色々と課題を持ち合わせている様子であり、その詳細は定かではない。睡眠時間については、彼女とその母親の会話から想像するに十分に取れていないことが推察される。食事について、とりわけ耳にするのは「チョコレート」という単語である。人間界には我々の食事以外にも様々な食材が存在していることは既に知られているところであり、恐らくはこれもその一つであると推察される。運動量は極めて少なく、日頃から岩登りを行なっている様子は見られない。日向ぼっこをしている姿もついぞ見かけたことがなく、カルシウム砂利を噛んでいる様子も確認できないため、その健康状態については非常に不安が残るところである。

以上、しおりの現在の状況を述べたが、それが心身ともに健康的でないことは改めて述べるまでもないであろう。近年、試験期間前後には奇怪な行動も確認されており、我々ペットにとっては極めて不安な日々が続いている。以下、稿者が実際に確認した行動を箇条書きで挙げていく。

①稿者を眺めながら「カメになりたい」と繰り返す。
②90分に1回のペースで「タピオカ飲みたい」を繰り返す。
③四角く薄い箱を見つめ、その箱から伸びる何かしら長細い紐状のものを耳に入れ、一人でにやにやとしている。

①から推察するに、我々の生活に憧れを抱いているのではないかと思われる。おそらくしおりには、我々が何もせずにぼんやりしているように見えるのであろう。しかしながら、それが真実に反することは本稿の存在が証明している通りである。我々は常に飼い主の言動に注目し、その傾向を分析、研究しているわけであり、決して暇を持て余しているわけではない。その事実に気が付かないでいるあたり、相当思い込みの激しい人物であることが推測される。
②の行動は解釈の難しいものである。「飲みたい」と言っている以上、「タピオカ」という液体状の何物かが存在していると考えられるが、時折「食べたい」とも表現しており、飲み物と食べ物を明確に区別できていない可能性が考えられる。90分に1回というペースを考慮しても、少々脳機能に障害をきたしているように思われてならない。そしてこのことは③によって、より明確なものとなるのである。
③における奇妙な行動はとりわけ夜中に確認される。時折「ミッキー…」との言葉をもらしてもいるが、 これは何かの呪文であろうか。やはり、脳機能の障害と見て間違いないであろうと思われる。

即ち、試験期間前後におけるしおりは、思い込みが非常に激しくなると同時に、脳が正常に働いていないことが以上の行動分析の結果明らかとなるのである。こうした飼い主の状態は我々ペットにとって非常に厄介なものであると言わざるを得ない。第一に餌の支給問題について。思い込みが激しいために、既に支給済みと判断される可能性が極めて高く、我々の生存権が侵害される恐れがある(そしてこうした場合、なぜか支給が増えるということはないのである。この点については今後より詳しい分析が必要である)。我々に可能であるのは、十分な主張を行うことくらいであろうか。犬や猫のように鳴くことのできない者はとにかく音を立てることを推奨する。ただし、あまり盛んに行うと飼い主の機嫌を損ねる可能性があるため、実行の際には十分に注意を払う必要がある。また、第二には、我々の休息時間が奪われる危険がある。思い込みの激しい飼い主が、我々が暇を持て余しているものだと決めつけていることについては先に言及した通りであるが、同時に彼らは、我々が人間を前にして無条件に喜ぶものであると錯覚しているらしい。これは非常に迷惑な話である。日向ぼっこと岩登り運動の間の休息を十分にとるためにも、むやみやたらと飼い主と目を合わせないことである。

餌については的確な主張をしつつ、それ以外は適切な距離感を保つというのは非常に難しい問題であるが、居心地の良い生活環境を保持していくためには各自がその調整を行なっていく必要があるだろう。だが、一方では愛想良く接することもペットの勤めであり、この具体的な方法については、水槽の中にいる我々よりもより人間の身近にいることのできる、犬、猫等による研究を待ちたい。また、本稿では、飼い主しおりのテスト後の状態について詳しく触れることができなかったため、この点についてはいずれ稿を改め述べていきたいと思う。

<執筆者紹介>
みどり(クサガメ♀・14歳)
過去数回、しおりのブログに登場。主に、飼い主・しおりの言動を分析している。好物は「カメの餌」。趣味は日向ぼっこと岩登り。