国立博物館 御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」

こんにちは、あかねです。私は先月と今月、国立博物館の特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」を見に行ってきました。前期・後期ともに見てきたのは初めてだったのですが、国宝は半期しか出していなかったり、前期には出ていなかった重要文化財が見られたりしたので行って良かったと思いました。今回、あまりにも数が多すぎたので自分の中で感動した物の紹介に留めたいと思います。
正倉院展
まずは森鷗外です。何故ここで文豪の名前が出るのかと不思議に思われるでしょうが、彼は大正期、国立博物館の館長を務めていました。今回の特別展では、入り口には宝物殿の閂を開ける音を詠んだ句が、出口には今までもこれからも伝統や美が伝えられることを願った句がありました。とても大きなパネルで、始まりも終わりも鷗外であったことに驚きつつ、その鷗外の歌も後世に遺されていくんだなあとしみじみしました。

次に心に残ったのは螺鈿紫檀五弦琵琶です。社会の資料集で、ラクダに乗った人が描かれた綺麗な琵琶を見たことがありませんか?あれの実物です。実物は漆の部分に経年劣化がやや見られましたが、螺鈿部分は今もなお輝いていて美しかったです。復元したものも少し離れたところに展示してあったのですが、楽器のお尻の部分の模様は自然界で生み出されるもののようで、多少異なる点がありました。しかし、赤い花の模様がうっすらと浮き出るようにされているなど趣向も実物と変わらず緻密でした。制作風景のビデオも流されており、職人の方々の技術力の高さとプレッシャーへの強さが凄いなと思いました。非常に細かな作業ばかりでした。まさしく「寸分狂わぬ」手さばきです。
三つ目に感動したのは白瑠璃碗です。碗は「椀」ではなく「碗」です。白瑠璃で出来ているそのお皿は、丸い模様が均等についているような物でした。多分これも社会の資料集で見たことがあると思います。ただ、写真と違い、昔の物は反対側の丸い模様がこちら側の丸の中に幾つも光って見える工夫が為されていました。手でCの字を作ってみてください。親指側から見ると、他4本の指の丸や手のひらの部分の丸がちらちらと輝いているのです。灯篭流しの明かりのような、クリスマスのキャンドルのような、小さくも眩しい光が星のように浮かび上がる様子はとても神秘的で、これは確かに国宝だと感じました。心が惹きつけられるとはきっとああいうことを言うのだと思います。
最後に、甘竹簫です。奈良時代の物なのですが、明治時代に12本の竹の筒を組み合わせた楽器として修繕されました。しかしその後、更なる竹の筒が発見され、明治時代の修繕は誤りだったことが判明します。貼り付けるための糊の部分だけを酵素で溶かし、虫食いが進んでいた箇所には木の皮と漆を混ぜたものを塗布し補強するなど、現在修繕が進められているそうです。これもビデオで紹介されており、修繕は宮内庁が受け持っていることや、一度修繕されたものでも新たに直す時は直すこと、そのための技術もあることに驚きました。前述の森鷗外は年齢もいっていましたし、仮にこの簫を見たとしても12本の竹筒のものだったことを考えると、なんとなく不思議な気分になります。現代に森鷗外がタイムスリップしてくる小説は幾つかありますが、現代の修正され始めている簫を見てどう思うのだろうと考えてしまいます。
黄熟香
おまけに。ガチャポンは一回500円でした。これは黄熟香というお香で、権力者たちが削って使用した跡が残っています。小さな短冊がついているのが分かりますでしょうか。右から足利義政、織田信長、明治天皇です。お香は焚くのが正しい使用法ですが、あまり使ってしまうとそれはそれで何とも言えない気持ちになりますね。意外と織田信長の使用量が少なくて面白かったです。
以上、「正倉院の世界」展レポでした。11月24日(日)までとなっていますので、皆さんも是非ご覧になってみては?特に本女の皆さんはキャンパスメンバーとして1200円のところを1000円で入れますよ!ちなみに、後期の展示を見に行った日は大饗の儀の直後、土曜の京浜東北・山手運休の前日だったので、平日の14時にも関わらず1時間待ちでした。お気を付けください。これを逃すと次は何十年後だろうという特別展です。この機会に、現代までまもられ、未来へ伝えられていく物たちを見てくるのはいかがでしょうか。