京都行って来ました。でも哲学の道とか寺とかもう飽きたの!
私は京都を古都としてではなく今を生きる都市として捉えたいの!
と思ったので、いつもとは違うところへ行ってみました。
京都市立水族館です。とても良かった!
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新幹線にのぞみってあるやーん
カール・ジムロックの『人形劇ファウスト』ではファウストが呪文で七匹の悪魔を呼び出して、そのなかからもっとも有能な者を自分の相棒に選ぶというシーンがあります。そのときファウストが悪魔の能力の基準としたのは(なぜかはよくわかりませんが)「速さ」でした。
砂のうえを這うかたつむりや落ちていく木の葉、空を行くつばめや射出された銃弾、はたまたペストの感染速度(これ銃弾より早いらしい)、さまざまな速さで動けると自己紹介するそれぞれの悪魔たちですが、「ずいぶん早いが、まだ充分ではない」とファウストは応じます。
そして「最後の者、いったいお前はどれだけ速い?」と尋ねたところ、最後の悪魔メフィストフェレスは「人ののぞみの速さです」と回答し、見事ファウスト博士の相棒に選ばれます。つまり「おれが思った瞬間にはもうそこにあるわけだな」というわけです。
これが新幹線名の元ネタってわけじゃないけどちょっと面白いねって思ったので書いておくよ。元ネタは普通にWikipediaに乗ってるし鉄オタの人に聞くといとも簡単に答えてくれると思うよ
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京都市立水族館の売りは(たぶん)五匹のオオサンショウウオです。サンショウウオといえば井伏鱒二ですね! やつらの特撮怪獣の着ぐるみを思わせるごんぶと手足を見ているあいだ「山椒魚は悲しんだ」という一文がさんざん頭をよぎったものです。それにしても実際に見てみると、オオサンショウウオというだけあって、確かにすごくでかかった。カエルの大きさなんてたかが知れている(大きくても多分小学生のお尻くらいでしょう)が、オオサンショウウオはほんとうにでかい。文章で読んだイメージ以上でした。ウェイトの差がありすぎ。バンタム級(矢吹丈)とウェルター級(力石徹)どころの騒ぎではなかったです。あしたのジョーはおもしろいです。
なお、両生類関係における私の目当てはトウキョウサンショウウオにありました。幼いころ図鑑のなかで散々見て憧れ続けたきみとようやく会いまみえた、そんな感動の瞬間でした!(初対面ですけどね!) 私の読んでた本が大判だった→大きな写真が多かったため、何となくバナナくらいの体長を想像していたのですが、それよりずっと小さかったです! 小指くらいでした! そしてとても可憐でした!
なお、小学校の図書室にあったどの生物本をとって見てもほんとうに頻繁にトウキョウサンショウウオちゃんのキュートなツラと出会いまくったんですが、それはなぜかと考えるに、児童へ環境問題を説くにあたって彼らは格好の存在だったんでしょう。
昔読んだトウキョウサンショウウオがらみで一番印象深いのは『たすけて』という絵本です。つまり「破壊されていく自然ちゃんたちがたすけてと叫んでるわよ!」という主旨の絵本です。絵ではなかったから写真本とでもいうの? いわゆるイラストの役割は写真が担い、そのかわり文章のほうがゴッホ並みに凹凸を感じられる絵具で描かれているところが面白いなと思いました。
ただ私は自然のほうよりも環境破壊の写真に写っていた重機に魅入られ、現在は九龍城砦ファンになりました。なんか『たすけて』で作者が説きたかった主旨と違うのは分かってる……しかしこの世すべてが九龍城砦だったらうんざりしちゃうよ 鉱山も軍艦島も九龍城砦も「この世の別の場所には瑞々しく鬱蒼とした薄暗い自然があるのだ」と信じることができるからこそ眼のなか胸のなかにおいてその美が際立つのでありどこまでいってもアレだったら自殺しちゃうよ
どちらもなければ成立しない美しさというものを『たすけて』から勝手に学ばせていただいた(作者の意図から露骨に外れている自覚はあるため「教わった」とは言えない……)
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サンショウウオ以外はね~
・エイ
やつらのおなか側が可愛いとか言ってるやつはモグリだ。エイのことを何もわかっちゃいない。
というのも、おなか側を思いっきり私の眼前に圧しつけながら水槽を這い上って行ったエイがいたんですけど、心底キモかった。確かに笑顔っぽく見えるけど笑顔っぽいものが確実に笑顔ならざる動きをしてるときのキモさといったらなかった。あれならいっそ怒り顔のほうがましだ。ただ人間が嬉しいときに笑顔を作り始めるより前からエイはあの顔(っぽく見えるもの)を腹にくっつけながら太古の海を悠々と飛んでいたんだろうから一方的に責めるわけにはいかない……
・無脊椎動物
ってクラゲやタコやウミユリとかのことね。そのなかでは、ミズダコの水槽がとりわけ光っていたように思います。例えて言うなら、水のなかに海老茶色の縮緬風呂敷を沈めた感じでした。骨がないというだけでああまでなめらかで怪奇な動きをできるものかと不思議になりました。可能ならば飼いたいほどです。よく言われることではありますが、こいつを最初に食べようと思った人はほんとうにすごいと思いました。母なる海が授けてくれる恵みへの信頼あってこそのことかと思います。漁師が海へ・猟師が山へと捧げるあの信頼と敵対と日常性と神聖性の混ざり合ったような雰囲気は、私には決して立ち入ることができませんが、それだけに永遠の魅力を放っています。
ミズダコちゃん 英語だとノースパシフィックジャイアントオクトパス
旅行中に私が自力で撮った写真これだけだった!
・カブトガニとオウムガイ
これらをいっしょに入れてあると昔のポケモンみたい(わかる?)。カニってことは茹でればこれやっぱり赤くなるのか? カイってことはバターと塩で焼くとおいしいのか? とかそんなことを考えていました。絶滅危惧種なので日本で食べると罰せられますが、中国の福建省とかでは普通に食べているそうです。
・タナゴたち
淡水魚の美貌には、海水魚の鱗のうえには見ることのできない素朴さと艶っぽさが共存しており、とても素晴らしかったです。火遊びするなら海水魚(できれば熱帯魚)がいい。奥さんにするなら淡水魚がいい。火遊びするなら深海魚がいい。そんな感じ。
・ビワコオオナマズ
全然大きくなかったんですけどほんとにあれオオナマズ? これアホロートル(ウーパールーパー)だよ~って言いながら出されたら信じちゃうくらいの大きさでしたし、体色が妙に鮮やかな山吹色だったんですけど……でも多分プレートにはビワコオオナマズと書いてあったんですけど。
・タガメとゲンゴロウ
やつらは陸地にいたらただの触覚なきゴキといった具合でまさしく絶叫ものですが、ただ水のなかにいるというだけのことで非常に楽しく面白いものに様変わりするので不思議です。もっとも、エビやカニなども陸地にいたらたちまち相当キモい物件と化すでしょうが。イセエビとかクルマエビサイズならまあ許せるがオキアミの群れが雨の道路をぴょんぴょんしてたら私は叫んで逃げます……
タガメがヤゴの体液を吸い殺すところが面白いので、生で見るのは難しいにしても、またむしむしQとかを真面目に観ようかなという気にさせられました。児童番組をなめてはいけない! このあいだ私おかあさんといっしょの「あ・い・うー」で泣いた!
・オイカワ
屋外の池にオイカワがいるって書いてあったのに姿が見えなかったのだ……
タコ、ゴンズイ、ヤツメウナギといったいささか不気味な見た目のものが特に面白かったんですが、これは水槽がまず割れることはないと信じているからで、もし実際に自分が海水に浸かりながら会わなければならないとしたらそれはもう……二度と海なんて入れなくなる……
今回見られなかったものではピラルクとシャチとジンベエザメが見てみたいな~と思いました! あとピラルクと同じような語感のでっかい魚が見たいんだけど名前を完全に忘れた。なんかテッポウウオとかといっしょにマングローブのある水辺に棲んでるイメージで、子供たちを自分の周囲に壁のごとく従えて育て、その子供たちが一斉に口をばくばくするもんだから口の壁みたいになっててすげーキモいけど面白い、みたいな感じの魚がいるんですよ。でも忘れた。ううー
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以前見たなかでは葛西臨海公園のコウイカとカツオがよかった。おすすめ。
特にカツオすごい! 泳ぐの凄く速い! そんでもって高校の地域研究で高知行ったとき食べたカツオ凄くおいしかった!! 炭火で炙ってポン酢をかけてもおいしくて、燻して薄く薄く削って醤油をかけてもおいしくて、動きが速くてひれがかっこよくて、更に見た目が渋い銀色と粋でいなせな紺色……と来たらそりゃあ日本人に愛されもするわ~もちろん私も愛してるわよカツオ~ ていうか国民的まんがの長男だし名前としての縁起もいいし ずるいよね~いろいろ占有しすぎだよカツオ~憎いけれども愛しいお前 食べちゃいたいくらい愛してるよ~