乱痴気キッチン・パンプキン

今年のハロウィンはなんとなく終わってしまった。そういえばあったね、と流れるよう終わってしまった。毎年毎年乱痴気騒ぎに混ざってお菓子をもらうのが楽しみだった僕からすれば、だいぶ悲しい話である。仕方のないことではあるが。
「今年はあんまりお菓子もらえなかったね」
テーブルに肘を置いて足をふらふらさせながら、彼女が不満そうに呟く。
「まあ仕方ないよ。そういう年もあるでしょ」
「ハロウィン楽しみだったのに〜!」
彼女の頭を撫でてやるが、まだご立腹のようだ。
「せっかくの楽しみだったのにねぇ」
その横から音もなく男が現れる。ひょろりと長いシルエットは月に照らされて、影を落とした。
「嫌になっちゃう!」
ぷんとほおを膨らませた彼女に男は肩をすくめる。僕はもう一人の助っ人を呼ぶ。
「どうしたの〜? そんなに落ち込んで。そんなにお菓子食べたかった? 作ってあげようか」
陰から現れたもう一人の助っ人は、長い服の裾をはためかせて、キッチンに駆け込んだ。
「え!? 本当!? ケーキが良いな!」
すると、みるみると少女の機嫌が治っていく。単純だな、という呆れと共に微笑ましさを感じて、によによと口角が上がってしまう。
「おやおや、ご機嫌いかがかな?」
「集まってきたね。大きいケーキにしないと」
「やったー! 楽しみ」
わらわらとお屋敷内が騒がしくなっていく。
「今年はハロウィンでそのままの姿でお菓子をもらうことができなかったから悲しかったけど、お屋敷内でパーティーすれば良かったんだ! 天才!」
「それもそうだ」
僕は頭に被っていた帽子を外す。彼は手袋を外している。彼女は楽しそうにメイクを落とし、あの子はタイツを脱いだ。すると出てくる角、鋭い爪、縫合の跡、変わった皮膚の色、包帯、羽。
「来年はこの姿で街に繰り出して、たくさんお菓子をもらおうね」
ハロウィンは僕らがそのままでいられる特別な日なんだから。