ありがとう、令和のヒーロー

こんばんは。しおりです。

11月になりました。今年もあと2ヶ月弱。考えてみると早いものですが、何だか今年は気持ちが晴れない日が多いですよね。家に籠って鬱屈した気持ちになって、外には出てみるけれど、本当にやりたいことを思う存分やったり、行きたい場所に行ったりできるわけじゃない。何だか気持ちが安定しない、そんな毎日ではないかと思います。

とにかく必要以上に電車に乗りたくない私は、ここ数ヶ月、自転車で近所に気晴らしに行くことが増えました。自転車をこいでいると、風も直接肌に感じられてとても清々しい気持ちになるのです。ただ、そうやってあまりに乗りすぎていたからかもしれません。先日、いつものようにこいでいると妙な違和感を覚えました。何かが外れた感覚。そうです、チェーンが外れてしまったんです。それも、外れた場所が不運にもなにもない場所。自転車屋さんまで行くのも大変な距離でした。母と二人、とにかく自転車を歩道に止めてどうにか直そうとしましたが、全くどうにもならないわけです。新しい自転車でもないので、そもそもチェーン自体が錆びていたんですね。下手に触っていると手を切ってしまいそうで、どうしようもなくなって呆然としていました。

するとその時。突然、走ってこちらに向かってくる人がいました。そして、「チェーン、外れたんですか?」と声をかけてくださったのです。持っていた軍手をさっとはめて、錆で汚れてしまうのも気にせずその場で直してくださいました。その方は車で車道を走っていたそうなのですが、私と母が突然立ち止まったのを見てチェーンが外れたのだと思い、居ても立っても居られなくなって車を止めてきたとおっしゃいました。チェーンを戻すと車から工具を持ってきて、緩んでいたネジまで締め直してくださいました。そして、全てが終わると何事もなかったように車に戻られました。何かお礼を、と思うもののコンビニも自動販売機さえもない場所。結局、「ありがとうございました」という言葉しか伝えることができませんでした。

困り果てていた時に突然現れて助けてくれる。それは小さい頃にテレビで見ていたヒーローそのものでした。コロナ禍のただでさえ気持ちの晴れない時期。自分のことに精一杯になってしまって、やさしさや思いやりを持つこと自体が難しい時期かもしれません。それも全く知らない他人に対してです。困っていることには気が付いたとしても、ソーシャルディスタンスなども言われていることですし、車にも乗っていたわけですから、通り過ぎてしまうのが普通ですよね。それをわざわざ車を降りてまで来てくれた。本当のヒーローってこういう人のことを言うのだと思います。

卒論に追われているこの頃。気持ちの落着かない中で全く知らない人に助けてもらって、何だか心のバランスまで正常に戻していただいた気がしました。どこの誰だかわからないけれど、忘れられない令和のヒーロー。本当のやさしさに触れた、心温まる一日となりました。