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〒112-8681 東京都文京区目白台2-8-1

研究内容Research


安全で環境にやさしい有機合成の実現を目指して以下の研究を行っています。


有機分子触媒を用いた新しい炭素−水素結合の官能基化法の開発
・ 目的の官能基だけを化学選択的に変換できる方法の開発
・ 酸素や過酸化水素等を使った環境にやさしい酸化反応
・ ホウ素などの典型元素の特性を利用した触媒反応の開発


 医薬品、化粧品、香料や化学製品を作るためには、分子構造を変換する有機合成はなくてはならない重要な技術です。しかしながら、化学合成の過程で生じる廃棄物の環境への影響がしばしば問題となります。また、化学合成の原料や試薬となる資源を無駄なく有効に活用することも考えなければなりません。私たちの研究室では、環境にやさしく安全な試薬を使って分子を変換する方法、触媒を使った廃棄物の少ない方法、多段階有機合成の工程数を減らすための化学選択的な変換反応、原料に含まれる原子を廃棄物にしない方法の開発を目指して研究を行っています。

最近の研究成果


新しい有機合成法
強ルイス酸性ホウ素エノラートとアルキンとのカップリング反応:Angew. Chem. Int. Ed. 2024, e202417910.
ホウ素エノラートは、アルデヒドなどカルボニル化合物と立体選択的アルドール反応が進行することがよく知られています。カルボニル化合物のような静電的な偏りのある分子に対してはホウ素エノラートやリチウムエノラートのようなメタルエノラートは容易に反応して炭素ー炭素結合形成を伴ったカップリングが進行します。その一方で、静電的な偏りのないアルキンには、ホウ素エノラートやメタルエノラートは一般的には反応しません。私たちは、強い電子求引性のペンタフルオロフェニル(C6F5)基が置換した強ルイス酸性ホウ素エノラートを使うことでアルキンとのカップリング反応を進行させることに成功しました。この反応は、パラジウムなどの触媒も必要としません。また、アルキンからB(C6F5)3と2,6ージブロモピリジン N-オキシドからこの反応に必要なビス(ペンタフルオロフェニル)ボロンエノラートを発生させることができるというところも独自に見出した成果です。これには、B(C6F5)3のメタロミメティックなpull-push反応性が鍵となります。