研究内容
学習の性差
セキセイインコの行動・脳には,性差があります(Eda-Fujiwara et al., 2016など).私たちは,セキセイインコのオスとメスを人為的につがいにして5週間飼育した後,つがいの雌雄を隔離して飼育を続けました.隔離直後に,配偶者とそうでない異性の声を交互に聞かせて,どのように返答するかを比較する実験を行いました.オス・メスともに,つがいを組んでいる期間中にきちんと相手の声を覚え,配偶者の声に多く返答しました.しかし,雌雄を隔離して1ヶ月経つと,オスの方は配偶者ではない異性の声に多く返答するようになりました.さらに,隔離から1か月後に,大脳・高次聴覚中枢であるCMMという領域を調べてみると,大脳半球優位性に性差があることを発見しました.鳥とヒトの脳の比較研究から,CMMはヒト大脳の感覚性言語野に類似した領域であるといわれています.また,ヒトの大脳半球優位性に性差があるという報告もあります.セキセイインコ脳を研究することで,ヒト言語機能に見られる性差の生物学的基盤が明らかにされることが期待されます.
音声模倣学習(他個体の音声をまねて自ら発声する学習)についてみると,雄はつがい相手の声を模倣しますが,雌は雄の声を模倣しません.しかし,相手の雄が模倣学習を行わない場合,雌は雄の声を真似ます(Plummer & Striedter 2002).また,複数の雌のみを入れた飼育ケージでは,雌は他の雌の声を模倣します(Hile & Striedter 2000).社会環境により雌の行動が変化するという興味深い現象が発見されていますが,その仕組みは不明です.社会環境がどのような仕組みで雌の行動に影響を与え,行動の性差が生じるのでしょうか.この疑問に答えるために研究を進めています.