水中の錯視

先日(2024年8月12日)の投稿に関連して、こちらの「興味深い」画像も共有いたします。野生メダカの生態調査中に、水中から水面を見上げた一コマです。上半分では、スネルの窓に水上の景色が広がっています。中央の杭は、定点観察用のカメラを取り付けるために設置したものです。下半分では、やや濁った水中で野生メダカが何匹も泳いでいます。
この画像の何が「興味深い」か、お察しいただけるでしょうか?
メダカに混じって見える「泡」です。明らかに水中にあるように見えますし、メダカが泡の上を泳いでいるようにも見えます。しかしよく見ると、これらの泡は平面的(円盤状)にくっついています。水中でこのような形状に集合するとは考えにくく、何処かの水面に浮かんでいる泡が、何らかの理屈で水中に見えていると思われます。
この理屈、愚かな私にはお手上げでしたので、空中結像の第一人者で、直近のめだか研論文の共著者にもなっていただいた、宇都宮大学の山本裕紹先生にメールでお尋ねしたところ、海外出張中でお忙しいにも関わらず、わずか8時間(現地時刻は21時半)で、下図を添付した解説を送ってくださいました。

つくづく思いますが、優秀な人ってのは本当に違います。同じ立場で、私が素人にしょーもない質問をされた場合、帰国まで数日間放置するのは当然として、質問があったこと自体を忘れる可能性が高いです。尊敬と感謝の念に堪えません。
それにしても、メダカがこのような錯視の世界に生きているとは知りませんでした。これらの「幻」は、水中生活において混乱を引き起こしかねませんから、適切に対処する仕組みが備わっていて良さそうですし、逆にこれを利用する水棲/陸棲動物がいても良さそうに思います。ヒト視点からは、この「水中結像」を水産業やアートに応用したら面白いかもしれない、と思いました。



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