魚のお腹が白い理由


多くの魚は、背中側が暗く、お腹側が明るく、色づいています。メダカも、背中は暗い茶色、腹は明るい白(銀)色です。このように色づく理由を「捕食者に見つかりにくくするため」とする説があります。「上から見下ろされる時は、暗い水底と同化し、下から見上げられる時は、明るい(キラキラした)水面と同化する」のだそうです。
この「なんとなくそれっぽく聞こえる」説に対して、特に疑問を抱かずに約50年間生きてきましたが、ここに示した画像(映像)をきっかけに、強い疑問を感じるようになりました。
これらは、野生メダカの生態調査中に、水中から水面を見上げて撮影したものです。水面付近をメダカが泳いでいますが、なるほど、明るい空と同化してよく見え・・・ますね。シルエットがくっきりと。
言われて(映して)みれば当たり前なのですが、水中から空を見上げる時は(少なくともスネルの窓の内側では)逆光になりますから、魚は「影」になります。どんなに腹が白くても、下からフラッシュでも焚かない限り、明るく(キラキラと光って)見えるはずがありません。比較的深い水深でも、状況は大きく変わらないと思われます(下図)。腹が白いことで、多少は目立たなくなるのかもしれませんが(光の弱い曇りや雨の日など?)、光の中で影を作らないようにするのは、体を透明にでもしない限り不可能です。

少し考えれば、この説の矛盾点に容易に気づけたと思うのですが、ぼんやりしているうちに半世紀も経ってしまいました。科学者として想像力が絶望的に乏しいことを悲しく思います。
では、魚の背側が暗く、腹側が明るい真の理由は何でしょう? 背側が暗いことについては、(陸棲の小動物と同様に)捕食者や紫外線の対策とする説があり、私も「そうかも」と思います(性懲りも無く)。腹側が明るい理由としては、「腹側ではこれらの対策をする必要が無いから」という消極的な理由を思いつきましたが、メダカは腹側の黒色素胞(melanophore)を減らすだけでなく、白色素胞(leucophore)を増やすことで、積極的に腹を白く見せていますので、これだけでは説明が不十分です。
メダカには、全身の白色素胞を失った突然変異体(leucophore free; lf)がいます(参考)。この変異体は、飼育室では野生型と同じように元気ですが(参考)、自然界では何らかの不都合/不利益があるかもしれません。それを調べることで、魚のお腹が明るい真の理由に迫れるでしょうか。



水中の錯視