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1.学校生活における心の安全
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| 日本女子大学 人間社会学部心理学科 教授 鵜養 美昭 |
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学枚教育を側面的に援助する「学校心理臨床」の仕事を長年続けてこられ、幼児から大学生までの心理療法(カウンセリング)と、保護者の教育相談、学校教師とのコンサルテーションを主な仕事としてこられる鵜養教授は、豊富な現場経験に基づいて多数の実例を挙げながら概略次のように話されました。
今日大きな問題になっている学級崩壊の原因の一つは、従来日本で大家族や地域の中で進められてきた子育てが、核家族化と地域の教育力の崩壊によって、母親が孤立無援の状態で行わざるを得なくなった点にある。
おむつの替え方からデイトやプロポーズの仕方まで実習する授業があるアメリカとは異なり、父親が仕事に専念する中で、子育ての教育を受けたことがない母親が一人で必死にもがき、頑張ることになるが、当然そこには余裕が無く、そうしたゆとりのない母親に育てられた子どもは対人関係が十分発達しないまま学枚に入学してくる。
その結果、授業中の「立ち歩き」や「授業離脱」が起こり、教師の苦労が始まることになる。 社会の激変は子どもたちの成長の舞台を破壊し、居場所さえ奪う方向で機能してきた。
破壊し尽くされたコミュニティの中で、学校だけは何とかコミュニティの形骸をとどめている。
この状況を受けて今の学枚は、子どもたちの成長の舞台であったコミュニティを再興しようともがいている。親たちもまた必死でもがいている。こうした努力を、知恵と力をあわせて実りあるものにしていくことが今を生きる私たちの努めであろう。
(文責:河内) |
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2.社会科学からみた生活リスク −男性40〜50歳代の自殺を中心に−
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日本女子大学 家政学部家政経済学科 教授 高木 郁朗 |
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生活の安全という論点を検討する場合、制度(歴史、文化などを含む広義の制度)との関連を抜きにすることはできないことを、リスクの最大表現としての「自殺」を通して明らかにしたい。
バブル経済の崩壊以降、とくに40歳台、50歳台の男性、事業がうまくいかなかくなった自営業主や失業した部課長クラスのサラリーマンの自殺が急増し、男性の平均余命の上昇を阻害し、女性の平均余命との差を拡大する要素となっている。
この年齢層の男性は、家計の責任者である。自らが生命を絶つことによって、生命保険金により、住宅ローンや事業面での借金を返済し、ある程度の生活資金を確保することによって、せめて家族の生活を維持していきたいという動機がからんでいる。
ここには、
失業や事業の失敗というリスクに対処できる社会保障などの制度が適切に機能していないこと、
一定の機会後ならば生命と引き換えに現金を入手できるという生命保険の制度上の仕組み、
生命保険と連動する住宅ローンなど融資の仕組み
などがかかわっている。
しかし、背景にあるもっとも大きな制度的な要素は、先進国のなかではもっとも実質的な強い男性片働きモデル(male bread winner model)であると考えられる。
年金制度、税制、職場慣行などによって助長されているこのモデルのもとでは、経済的に自立した男女によって家族が形成されるのではなく、女性にはさまざまな差別が、そして男性には過剰な所得確保責任がかわされることになる。
男たちは、自殺や過労死に示されるように、自らの生命でこの責任を果さなければならないという事態も生まれてくる。
ここでは自殺を例にとったが、生活の安全学の推進にさいしては、ぜひ生活の安全にかかわる制度的側面、いいかえれば、社会科学的側面についても、重視していただけるよう期待したい。
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