トラス力学の可視化教材「トラスキット」
1.引張・圧縮
 学習目標は、部材に生じる軸力を考えた場合の引張・圧縮の区別、力の流れを可視化して理解することであり、外力と伸び量とが比例することを実験で確認する。その結果を基に弾性状態・塑性状態、フックの法則(F=kx)、ヤング係数などの理論的な説明を行っている。特にヤング係数の理解は、単純梁の回への前提になる。

 具体的には、部材に生じる力として現象を単純化するため、独自に開発したトラスキットのパーツを用いて実験を行う。レポート(資料1)を学生に配布し、図中の実験1〜9を行い、その結果をグラフに描き、定量的に理解する。トラスキット(写真1)には伸び縮み量を示す目盛りがついているため、これを利用して定量的に結果を読み取る。実験精度を向上させるには、学生の試行錯誤が必要であり、実験精度の学習にも役だっている。
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写真1 圧縮実験の様子

 実験結果に基づき理論を授業内で解説し、最後にレポートで各自が結果と理論を結びつけて考察する。そこで資料1のように、実験結果から分かったことをまとめ、伸び量がなぜそのようになるのかという理論的根拠の説明を、レポート課題とした。
 実験1〜5までが引張力をみる実験であり、実験6〜9が同条件における圧縮力の実験である。実験結果から、次の場合における変位量の違いを理論的に理解できるように構成している。

(1) 実験2の変位量は、実験1の2倍
(2) 実験3の変位量は、実験1の半分
(3) 実験4の変位量は、実験1と同じ
(4) 実験5の変位量は、実験1+実験3
 (5) 実験6〜9は、1〜4と同一の変位量の圧縮

 これらの実験結果を、学生自身が自分でグラフ化し結果を描くことによってフックの法則を体験的に理解する。また、このフックの法則を発展させ、断面積がが変位量にかかわるという関係から、ヤング係数を説明することで、後の単純梁の変形関係を理解するための基礎となる。
2.トラス
 この回では、トラスとは何か、ピン接合の三角形という形態が構造的に安定していることを学ぶ(写真2)。三角形の幾何学的な組み合わせが、曲げをともなわず軸力のみで構成され、前回学んだ引張・圧縮力の組み合わせであることを理解する。用語として、節点、不安定・安定構造、支点(ピン、ローラー)、反力などを理解し、トラスに働く力の種類と示力図との関係を詳述する。示力図を用いて、力のつりあいの基本概念である力が閉じることの意味を演習を通して習得する。
 特に小さな変形を学生全員に同時に見せて説明するため、映像で拡大して中継するという教育上の工夫も実施している。つまりCCDカメラでトラスの各部材の引張・圧縮の度合いを拡大して映写し、学生一人一人に見えるようにした。こうした映像を用いて、実物とその詳細を全員が同時に情報共有することは、意識が発散しがちな学生の参加意識を高め、授業への集中を促す効果がある。時には実験プロセスを映像中継することも有効である。

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写真2 トラスの実験

 この項目は、引張・圧縮の授業回と連動し、次のような手順で授業を構成している。

(1) 引張・圧縮の回と同じトラスキットを用いて、基本的なトラスを作成し、載荷による各部材の変形を可視化により体得する
(2) 実験で体得したトラス結果を、示力図を用いて理論的に理解する
(3) 示力図の図式解法(演習)を通して、「力のつりあい」概念を習得する。
(数式解法はこの後の静定力学で学習)

 この回では班ごとに行う実験結果を用いて、トラスを解説し、実際にレポートで問題を解く(資料2)。未知である反力は示力図から解けることも指導のポイントである。
 実験結果と理論値を示力図を使って解説することが今回の主目的である。したがって、この回では示力図は各点における示力図を描くまでにとどめている。力のつりあいという考え方を抽象的に、あるいは示力図の解き方を方法だけで学ぶと、与えられた問題は解けても実構造物への展開や応用力が不足するが、学生は具体的な例を通して学ぶことで、理解が深まっていく。
 また実際のトラスの例を写真や資料を活用して見せるようにした。レポートでは、実際のトラスを収集し、その形状や大きさ・種類をまとめるように課題が出される。これによって学生は身近にトラスを多く発見し、その力の流れを考察することで実構造物、構造学へと動機付けられていく。

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>>http://www.maruto-group.co.jp/products/education_maruto/truss.htm
(株式会社 丸東製作所)

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