水 中 通 信

  なぜ、光を用いた水中無線通信が注目を浴びているのでしょうか。
  ここでは、その背景について紹介します。

  陸上でいつでもどこでも無線で通信が実現できているのは、送りたい情報を電波に乗せることができるからです。しかし、電磁波は陸上で大活躍するものの水中では次第に吸収減衰(エネルギーの損失)が起こる(図1)ため、陸上と同様の安定した高速通信を実現することが難しいという課題がありました。

図1 水中での電磁波の吸収減衰

(一般社団法人日本ITU協会 海中における電波利用の可能性〜水中通信〜より引用)


  そのため現在は、比較的吸収減衰が少ない状態で遠方通信を可能とする音響(超音波)通信が主流となっています。しかし、近距離通信では反射により複数の伝播経路が生じ受信する信号が乱れてしまうマルチパス(多重波伝播)、音や光など波を発する物体が移動するときに送波側と受波側の相対的速度差によって周波数が変わるドップラー効果(救急車が近づくときと遠ざかるときで音の高低が異なって聞こえる現象でお馴染みですね)の影響が大きいという欠点が挙げられます。周波数が高くなると吸収減衰が大きくなってしまい、ノイズなど周囲の影響を受けやすく安定した通信が行えなくなることに繋がります。また、伝送できる情報量に限りがある、遅延が大きくリアルタイムの通信が困難であるなどの課題が挙げられます。

  これらの課題を解決すべく登場したのが「光無線通信技術」です。図1からもわかるように、可視光は周波数の高低に関わらず水中での吸収減衰が非常に小さいという特徴があります。電磁波や超音波の代わりに光を用いることで、従来の約1000倍の速度で大容量データの送受信が期待できるようになりました。また、光は潮流や波浪、海水の濁りなど様々な環境に適応できるという利点があります。
  しかし、そんな光にも青色や緑色レーザ光は吸収減衰が小さいが、私たちがよく見る赤色レーザ光は比較的吸収減衰が大きかったり、水中では波の上下運動により光の伝播経路の揺らぎが発生したりと、水中でも陸上と同様の安定した高速通信を実現するためには、まだまだ課題があると言えます。

  現在、水中光無線通信は研究者が少なくニッチな領域かもしれません。しかし、だからこそ研究すべき領域であり、また発展余地が無限にあり将来需要が高まる研究分野でもあると言えます。