血液型と性格の話 - 前置き(1/5)

 ヒトの血液には幾つかの型があり、異なる型を混ぜ合わせると凝集します。輸血時の凝集は致命的なので、血液型は医学的に重要な意味を持ちます。理学的には、異なる型の存在自体が興味深く、その意義・役割や進化について研究する人がいます。

 ABO式血液型は、1901年にKarl Landsteiner博士が発見しました。恐ろしいことに、それ以前にも輸血は行われており、当然ながら成功率は低かったようです(参考)。血液型の発見によって輸血事故は減り、Landsteiner博士には1930年にノーベル賞が授与されました。

 ABO式血液型を決める遺伝子は、1990年に山本文一郎博士らによって解明されました。この遺伝子は、赤血球表面の糖鎖(H抗原)に糖を付加する酵素を作ります。A型とB型の酵素は活性が異なり、それぞれ異なる糖を付加します。O型の酵素は活性を失っており、何も付加しません。

 日本には「ABO式血液型と性格が関連する」と感じる人が少なからず存在し、多くの人が様々な手法でこの仮説を検証してきました(参考1参考2)。それぞれの詳細については省略しますが、様々な調査が行われたこと自体、この仮説に対する日本人の関心の高さを表しています。

 実は筆者も「関連する」と感じる一人です。しかし、飲み会の席などでその話になると、「遺伝学者なのにおかしいでしょ」と呆れられる(怒られる)ことが少なくありません。筆者に言わせれば、「遺伝学者だからこそ、両者の関連を容易に否定できない」のですが、それを丁寧に説明すると、多少なりとも遺伝学の素養のある人ならば、大抵は納得していただけます。

 キーワードは「genetic hitchhiking」と「genetic background」なのですが、長くなりそうなので、次回以降、何回かに分けて解説を試みようと思います。学科HPを立ち上げた一人として、誰も投稿してくれない「科学コラム」を更新しなきゃかな、との事情もあります。泣