立体像について

立体視について〜立体の知覚〜
アナグリフの原理
作成手順

立体視について〜立体の知覚〜

 ホログラムの特徴として、写真が二次元の像であるのに対し、完全な三次元像の再生が可能であるということがあげられます。 ホログラムについて説明する前に、そもそも私たちはどうやって“立体”を知覚しているのかを説明したいと思います。 立体の知覚には、生理的要因と心理的要因があります。生理的要因は、私達が意識していなくても、身体が自動的に行うものです。 心理的要因は、今までの経験から得られた後天的なもので、二次元映像に対しても機能します。 生理的要因には、輻輳(輻輳)、焦点調節、両目視差、運動視差の4つがあり、これらを利用して、人間は立体を知覚しています。次から、それぞれについて詳しく説明します。

  1. 輻輳
  2.  私たちの目は、物体を見るとき、より目のようになります。この運動を、「輻輳運動」といいます。 図1-1 では、赤い球体を注視している様子を表しており、赤い球体に対する両目の交差角を輻輳角といい、目から左右の視点が交差する点までの距離を輻輳距離といいます。 輻輳角の関係はα>βですが、輻輳距離の関係は A<B です。 このように物体との距離に応じて、輻輳角と輻輳距離は連動して変化します。 すなわち、物体との距離が近いと輻輳角は大きく輻輳距離は小さくなり、遠いと逆になります。

    図2-1
    図1-1 輻輳の概念図

  3. 焦点距離
  4.  注視する物体に対して、目の水晶体の形を変化させてピント合わせを行うことを、焦点調節といい、目から注視する物体までの距離を焦点距離といいます。 対象が近くにある時は水晶体を厚くし、遠くにあるときには水晶体を薄くします。

  5. 両目視差
  6.  両眼は約60mm離れているため、図1-2の下に描かれているように、左目と右目に映る像は、 位置や方向の違いが生まれます。 この違いを両目視差と呼びます。 実際に、目の前に人差し指を立てて、片目をつぶって見てみると、違いがよくわかります。

    図2-1
    図1-2 両目視差

  7. 運動視差
  8.  視点が移動することによって起きる変化は、運動視差と呼ばれます。例えば例えば 一列に並んでいる人たちを前から見ると先頭の人しか見えませんが、横から見ると後ろに並んでいる人が見えます。

アナグリフの原理

 最近では、3D 映画や 3Dテレビなど、実際に立体ではないのに立体的に感じることができる、 「立体像」を表示できる技術が身近なものになりました。
 立体像の表示にはいくつかの方式が存在しますが、今回は、両目視差を利用したアナグリフ方式について詳しく説明したいと思います。
 アナグリフというと聞き慣れないかもしれませんが、赤青メガネを使う方式、 と言えば、多くの方がわかると思います。小さいころ実際に使ったことのある 人も多いのではないでしょうか?
例えば、図1-3のように立方体を見た時、両目視差によって、左右の眼には異なる二次元像が映ります。

図2-4
図1-3 立方体を見たときの両目視差

 ここで、図1-4 のように左目から見える二次元像 を青色に、右目から見える二次元像を赤色に着色して、一つの二次元画像(ア ナグリフ画像)として合成します。そして、左目には赤のフィルム、右目には 青のフィルムをつけたメガネをかけてこの画像を見ると、フィルムと同じ色は 背景の色と同化して見えなくなるので、左右の目に異なる二次元像が映り、脳 は立体として知覚します。
図2-5
図1-4 アナグリフの原理

 このように、立体視を実現する二次元図はステレオグラムと呼ばれ、 アナグリフはステレオグラムの一種です。他にも、色のついたフィルムではなく 、偏光板を貼り付けることによって左右の像を分離する偏光フィルタ方式というものもあり、 3D映画などによく使われています。

作成手順

 まず、被写体の写真を、一つは真正面から見て少し左から撮影し、もう一つは少し右から撮影します。
 そして、この2つの画像を、白黒にします。(カラーで作成する方式もありますが、今回は最も単純な白黒で行いました。) 次に、2 つの画像を、赤色(R)と青色(G+B)に分離します。 左目用の画像の青色成分と、右目用の画像の赤色成分を重ね合わせると、アナグリフ画像が出来上がります。
 しくみは単純なものの、2 つの画像の重ねあわせ方によって、よく飛び出て見えたり、全く立体的に見えなかったりするので、その部分の微調整は、実際に眼鏡をかけて見ながら調節を行いました。

図1-5  アナグリフ画像の合成方法

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