RESEARCH

研究紹介

細胞の中をのぞいてみよう
そこは分子が駆けまわる宇宙
さあ、謎解きの旅にでかけてみよう
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私たちは、ヒトなどの高等真核生物のDNA複製を研究しています。私たちの研究の目標は、DNAの複製の仕組みを分子レベルで明らかにすることです。特に最近は、複製開始点で働くタンパク質に着目しながら、複製開始点における仕組みに関する解析を進めています。

DNA複製は、DNAのコピーを作る過程であり、様々なタンパク質の働きによって行われます。DNA複製は原則、細胞分裂する前に一度だけ行われ、細胞周期の制御を受けながら進められます。DNAを合成する過程であるDNA複製ですが、細胞の性質や機能を規定する遺伝子発現プログラムの複製という意味も含まれています。私たちは、複製開始点における仕組みと転写調節との関係にも着目しながら研究を進めています。

DNA複製を阻害すれば、がん細胞の増殖を抑えられることは明らかです。もしもがん細胞だけがもつDNA複製に関する仕組みが見つかれば、そのしくみを標的にしたがん治療法の開発も可能となるかもしれません。このような思いを抱きながら、日々研究に励んでいます。

(詳しい研究の内容は、下記をごらんください。)

 

私たちの研究室では、特に近年は、ヒトなどの動物細胞の複製開始点ではたらくタンパク質に着目しながら、複製開始点でのしくみについて研究しています。

なぜ複製開始点に着目するかというと、ヒトの複製開始点については、未だに解明されていない重要な問題があるからです。

ヒトのDNAには約30,000カ所の複製開始点があると報告されています。その複製開始点はDNA上の特定の場所(位置)に決められています。どういう仕組みでヒトの複製開始点がそのような特定の場所に決められているのでしょうか?実は、この問題は40年以上もの長い間、世界中の研究者によって取り組まれてきましたが、未だに解明されていないのです。私たちはこの問題の解明に取り組んでいます。

この問題の解決を困難にさせている理由の一つが、ヒトの複製開始点を決定する共通の塩基配列が見つかっていないことです。問題の解明に向け、私たちは、主にORC(オークと発音)というタンパク質複合体を解析しています。なぜなら、ORCは、DNA複製がはじまる際に、一番初めに複製開始点に結合するタンパク質だからです。ORCを調べれば、複製開始点に秘められたしくみが見えてくると考えたのです。

しかし今、私たちは大きな問題に直面しています。実は、ヒトのORCは、複製開始点のDNAだけでなく、どんな塩基配列をもったDNAであろうとも、同じぐらいの強さで結合するのです。このようなORCの性質からは、どうやってORCが複製開始点を見つけて結合するのかを説明することはできません。

私たちは、ヒトのORCを解析していく中で、ORCがもつ新しい性質を見つけました。それは、ヒトORCには、グアニン(G)に富む塩基配列(G-rich配列)をもつ1本鎖DNAやRNAにより強く結合するということです。通常の2本鎖DNAへの結合には塩基配列特異性はありません。しかし、1本鎖の核酸(DNAやRNA)に対しては結合する配列の好き嫌いがあったのです。

この新規のORCの性質に注目する理由があります。それは、同じようなG-rich配列がヒトやマウスの複製開始点の近くに高い割合で存在するという報告があったからです(2012年フランスの2つの研究グループによる発表)。ここで、複製開始点とORCとの間に、G-rich配列という共通点が見つかりました。

残念ながら、問題は単純ではなさそうです。自然はそう簡単には答えを教えてくれません。私たちはあらゆる可能性を考えながら、仮説を立てその検証に挑んでいます。G-richな配列を好むというヒトORCの性質が細胞にとってどういう意味があるのか。可能な技術を駆使して、この問題の解明に私たちは取り組んでいます。また近年、ORCなどの複製開始タンパク質がDNA依存的な液-液相分離を引き起こす可能性が報告され、新たな方向への研究が進みつつあります。さらに、複製開始点領域にあるG-rich配列が複製開始点の機能に重要であることが明らかにされ、ますますG-rich配列に注目です。

実際の実験では、ヒト培養細胞、昆虫培養細胞、バキュロウイルス、あるいはカエル卵などを使った解析を行っています。また、細胞への遺伝子導入、遺伝子クローニング、蛍光顕微鏡による細胞の観察、組換えタンパク質作製、組換えウイルスの作製、カエル卵in vitro DNA複製系などの分子生物学的、生化学的、細胞生物学的手法を利用しながら研究を進めています。