
2010年7月3日(土)、児童学科では児童学序説という授業に津守眞先生ご夫妻をお招きし、お話を伺いました。学部の授業でしたが、院生や院修了生も多数出席しました。香港から駆けつけた院の修了生もいました。当日司会を務められた福本俊教授からの報告です。
津守先生には児童学科の学生、それも一年次の学生諸君と是非とも会って頂きたい、これは長い間の念願でした。それが遂に叶えられました。それも房枝先生もご一緒に。厳しく激しい研究と奥深い子どもとの実践を経てこられた先生も84歳になられ、人生においても文字通り円熟の境に達しておられるご様子でした。
お話して頂くに当たってのご注文は、私の方から色々と質問をし、それに先生がお答えくださる、と言うやり方でした。そこで皮切りの質問として、愛育養護学校で一人の子どもが自分の口に含んだ水を津守先生の顔に「ぴゅーっ」とかけたら先生も、やおらその子の顔に「ぴゅーっ」と掛け返し、そこから楽しそうな二人の世界が展開して行ったことがありましたが、どんな意図で先生は水を掛け返したのですかとお尋ねしました。
私はとってもそれを聞きたかったのです。「子どもが本気になったとき,それについていけば間違いはありません」と先生。子どもたちが自分から、暮らしを展開させて行けるような配慮に満ちた場こそ愛育養護学校であることを改めて思わされたお答えでした。愛育での先生は、子どもたちと時を忘れて徹底的に付き合われます。
私もかつて愛育養護学校にお邪魔した時に、先生がその子の両手を握り、私がその子の両足を握ってぶらぶらと左右に揺らす通称「豚の丸焼き」をしたことがありました。これを随分長い時間やっていました。多分先生は「次にこの子は何をしてくれるのだろう。この子は自分の心のどのような秘密を打ち明けてくれるのだろう」と言う楽しみで子どもと真正面で向き合っておられるのだろうと思わされたことでした。
病いを得られて一言一言確かめるように話されたのが却ってお心が篭って何ともよい響きでした。感激した一人の学生が早速私の部屋のポストに「何を具体的に学んだというよりもこの世の中にこれほどの人の心の優しさと言うものがあったのだという思いに撃たれました」との感想文を寄せてくれましたが、本当にその通りの90分でした。その後お二人と近くのお店で美味しい鰻のお弁当を頂きながら楽しくお話をお伺いでき、佳い思い出がもう一つ重なりました。お二人に感謝しつつ。
(文責:福本 俊 教授)