「森林生態系への温暖化の影響」
地球温暖化が進行しており、その影響は中高緯度で大きくなることが予想されている。森林生態系は多くの炭素を貯蔵していることから、温暖化がこれらの生態系にどのように影響するかを明らかにすることは急務である。
中高緯度の森林は積雪や土壌凍結に晒される厳しい冬に特徴づけられる。温暖化の影響はこのような冬季にも顕著に表れ、場所によっては春や夏よりも深刻な影響を生態系にもたらすことが知られている。
たとえば、積雪の多い地域に成立する森林では、積雪の保温効果によって林床の植生が外気温から保護されている。たとえば、外気温がマイナス30℃でも、厚い積雪の下の温度は0℃付近であることが多く、凍結を免れている。温暖化により、積雪が減少すると、その保温効果も失われてしまうことから、林床の植生が外気温の厳しい寒さに晒されるようになる。つまり、温暖化によって寒さに晒されてしまう生態系が中高緯度に多く存在する。凍結が起こるような厳しい外気温に晒されることによって、多くの植物やその植物を利用する動物などが生息地を失う可能性が示唆されており、森林生態系が劣化するとその場所に貯蔵されていた多くの炭素が二酸化炭素として大気中に放出される恐れがある。北半球を中心に、中高緯度には多くの森林生態系が存在しており、重要な炭素の貯蔵庫としての役割を担っているが、冬季の温暖化の影響の研究はまだまだ進んでおらず、大気中の二酸化炭素濃度の予測のために理解が必要である。