動物行動学研究室
指導教員
専門分野
動物行動学、神経科学、鳥類学、心身健康科学
鳥の音声模倣行動が教えてくれること
鳥のつがいや親子には「鳴き真似」がみられます.また,児童文学「ドリトル先生」シリーズに言語に堪能なオウムが登場するように,オウム目の鳥が人間の言葉を真似ることは昔からよく知られています.私たちはオウム目セキセイインコ(Melopsittacus undulatus)の音声模倣行動を中心に,鳥の音声コミュニケーションの研究を行っています.オウム類のヒナは周囲のおとなの声の真似をするようになり,おとなは同じ群れの仲間の声や配偶者の声を真似ます.また,ペットとして飼育されているオウム類は飼い主の話し言葉を真似ることができます.行動解析(音声解析など)を中心に、脳・DNA・ホルモンとの関連も含め,以下のテーマの研究を展開しています。
<ヒト音声言語の生物学的理解に向けた比較研究> 音声模倣能力は,ヒトの音声言語の獲得に不可欠な要素です.この音声模倣能力は,動物界全体をみると限られた動物にだけ見られる稀な能力で,ヒトに近縁である類人猿にはみられません.2 億5 千万年以上も前に共通祖先から分かれ,別の進化の道を辿ってきた鳥とヒトとを比較することにより,ヒト音声言語の生物学的理解を深めることをめざしています.
<音声模倣行動の性差> 音声模倣行動の性差については,性差が大きい種から,性差がほとんど見られない種まで多様性がみられます.セキセイインコの音声模倣行動は,雌雄ともにみられるものの,雄の方でよく起こります.この性差が生じる要因の解明をめざしています.
<発声行動とストレス> 環境からストレス刺激を受けた時,動物は適応的な行動を示し,ストレスに対処します.発声行動に注目して,ストレスに対する適応的な応答のしくみを明らかにすることをめざしています.
2023年度の卒業研究テーマ
(1)雄セキセイインコによる配偶者コールの模倣
(2)雌セキセイインコの発声行動:性差の理解に向けて
(3)セキセイインコによる日本語音声模倣:音節組み合わせ能力の検討
(4)発声学習・維持における聴覚フィードバックの役割:成鳥と幼鳥の比較