分子生物学研究室
指導教員
専門分野
分子生物学、生化学、細胞生物学
ヒト細胞の複製開始点のなぞに挑む
DNAの複製は、細胞が分裂して増殖していくために欠かせない生命機能の一つです。このDNAの複製は、細胞がもつ長いDNAの中のある特定の地点(領域)から始まります。この地点のことを複製開始点といいます。大腸菌のDNAでは、複製開始点は1カ所だけです。一方、ヒト細胞では約30,000ヶ所あることが近年の研究から明らかになりました。
重要なことは、この30,000ヶ所の地点はランダムに決められているのではなく、何かしらのルールに基づいて決められているということです。どこに複製開始点ができるかによっては、細胞の運命も変わる可能性があります。当研究室では、ヒト細胞における複製開始点を決めるルールを見つけようと研究に取り組んでいます。
このヒト細胞の複製開始点に関する問題は、1953年にワトソンとクリックがDNA二重らせんモデルを発表してまもなく、1960年代から取り組まれてきた問題です。そして、現在でも未だ解明されていないのです。60年以上も世界中の研究者が取り組んできたにもかかわらず解明できていないのですから、ヒトの複製開始点を決めるルールは、そう単純ではなさそうです。
当研究室では、複製開始点で働くORCというタンパク質を中心とした解析を進め、遺伝子の転写、核酸のグアニン四重鎖形成、相分離などというDNA複製とは一見関係なさそうな事象にも注目し、大胆な仮説を立てながらヒトの複製開始点を決めるルールの解明に取り組んでいます。
DNA複製は生命機能の分子基盤の一つです。その真実を追求するということは難しさを伴いますが、やりがいがあり楽しいことです。