唯雅独尊

怖い夢でした。
いえ、夢ではないのですね。「わたし」は学校が少し怖いのです。「わたし」の出席番号は33番(当時女子生徒の出席番号にはプラス30だった)で、ええと、3号車の前から3番目の3月生まれの、ああでも、残念ながら11日生まれですけれども。

それが「わたし」。「わたし」の証明でした。

だから、そう。廊下にある、給食ブクロやお道具ブクロをかけるところは「33」の数字がついているところ。それがあるから、「わたし」は「居てもよい」のだと思います。
それは美術室でも理科室でもそうなの。図工の時間には、「わたし」の作品は「33」のプラスチックケェスに入れて、授業が終わる時に先生に見せに行く。


「わたし」ね、図工のお時間が好きなの。だから、その日もお気に入りを必死に粘土を捏ねて表現していたのかな。

『じぶんの好きなもの、綺麗だと思うものを、塔にしてくださいね』

って先生が言ったから。「わたし」のキレイを捏ねて塔を作った。
それは宇宙色の塔。塔のてっぺんにはお月様。にっこりしているお月様。宇宙にはお星さまと、お魚さんが流れてる。でもね、色が皆くすんでて、とっても暗い。



なにいろ。足りないのは、なにいろ?



わからなくて、悔しくて、パレット持って流し場に走った。
ふと、鏡の「わたし」と目が合った。噛み締めたクチビルに、紅が。
「きれい」。


「わたし」は初めて「わたし」に「きれい」だと思った。
後にも先にもこれきり。


いそげ、いそがなきゃ。粘土が乾く前に。
赤い絵の具を握り過ぎて、手も真っ赤。一心不乱に「わたし」は塔にも「きれい」の「紅」を刺した。


あ、これが、「わたし」の「きれい」!





***





誇らしげに「33」のケェスに塔を置く。
でも先生に見せるための列は混雑してる、授業の終わりが近いみたい。
先にお道具を片付けようかしら。


けれど、お道具を片付けて戻ってきた時には、もう塔はしんでしまっていた。
固まりかけの粘土が、抵抗していたみたいに、元の形をちょっとのこしていた。あとは、みんな「3匹のコブタ」のお家みたいにオオカミさんに壊されちゃったみたい。

「わたし」が困っていたら、「わたし」の名前が大きな声で呼ばれた。
先生にまだ作品を出していないのは「わたし」だけなんだって。先生はこちらへ来て、しんだ塔を見て驚いた。『落としちゃったの?』そんな訳ない。


後から聞いたんだけれど、その子たちが塔をころしたのは、怖かったからなんだって。
紅色が、不気味で、呪いの塔みたいって。




ごめんね、「わたし」がちゃんと塔を「きれい」を守ってあげるべきだった。