せっかく卒業するんだから後輩のためになることを書いてから卒業したいと言ったら、あなたそういうところがある、とみちるさんに言われた。ある。私は有益な情報を残す先輩でありたい。
4年間大学にいて、この授業、ためになったなあ、というものを書き記していく。担当教授が変わってしまっている授業もあるだろうし、誰かがこのブログを読む頃にはもう存在しない授業もあるかもしれないけど、きっちり書いておく。後輩のための情報である前に、私自身の学びの記録である。
教養『女性と芸術』
世界的に有名な芸術家を3人挙げろと言われ、その中に1人でも女性の名を入れることができるか。評価されている作品のその「評価」とは殆ど男性による。女性を視点に、女性の眼で芸術を鑑賞する授業。私は大学1年生でまだフェミニズムについて何も知らない時にフェミニズムの基本を教わった。世界の見え方が変わった。文学の読み方も変化した。
日文『日本文学史-中世』
正直、必修。日本文学科に所属しているのに履修しないという選択はない。中世志望以外の人に心からお勧めする。特に低学年の学生におすすめ。日本文学の基礎よりも日本文学の基礎を学べた気がしている。文学を読むとはどういうことなのかを知れる。それは扱う時代に限らない。また、論文をアブストラクトする(要約、要旨を作る)課題によって研究論文の型を学べるため、論文を読むのも書くのも格段に楽になる。通年の授業でかなり大変だが、この辛い一年が何度も未来のあなたを救う。
キャリア『現代男性論』
ブス!は絶対に言ってはいけない悪口なのに、なぜかハゲ!は許されている。なりたくてハゲになったわけではないのに、ハゲは明るいピエロでいることを求められる。なぜ?男性を差別する男性、ヘゲモニック・マスキュリニティの存在。軽視されがちな「男の生きづらさ」に真っ向から向き合う。人の心に巣食う差別の恐ろしさと、現代を「善く生きる」ための精神性を学んだ。
日文『中国思想演習』
漢詩を鑑賞し、漢詩を作る授業。あなたにも漢詩が作れます。コツは、漢詩っぽくしないこと。ほとんどの学生が旅先の景色など特別な経験を朗々と詠む中、とある先輩が自分のおばあちゃんの普段の様子を漢詩で詠んでおり、それがあまりにも素晴らしく、感動した。詩は心を詠むもの。
教養『政治学』
日本の政治の歴史なんかが学べる授業だと思っていたら、初回で「本授業で扱うのは『フェミニズム政治学』です」と言われ、非常に本学らしさを感じて良かった。内容はブログ部のルール上、書けませんが、おすすめです。
キャリア『社会に出るための自己表現』
元電通の方が講師の授業を受けた。4年間で受けた授業の中で一番面白かった。CMを沢山見て、広告に沢山触れて、伝わる表現、魅了できる自己表現を学ぶ。「そうだ京都行こう」が人の心を惹く理由は?「心も満タンに、⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎」と聞いて社名を当てはめられることのすごさ。「すぐおいしい、すごくおいしい」に見る繰り返しのテクニック。伝わる、耳に残ることは偶然ではない。表現の奥にある公式を学べは、今すぐ伝わる自己表現が実践できる。
日文『創作技法論I』
短歌創作の授業。いい短歌はある程度までは訓練で作ることができると知った。短歌を鑑賞し、実際に詠むことを繰り返せば、自然と身につく技法がある。短歌は三十一文字しかないから、詠む対象がかなり重要になる。どう詠むかより、何を詠むか。その上でどう詠むか。私が一番好きな短歌は「夢にわれ妊娠をしてパンなればふっくらとしたパンの子を産む」(渡辺松男)
以上、厳選した7つの授業について記した。私は近代文学専攻のため、近代文学の授業を数多く履修したがそれについては一切触れていない。専攻分野のバイアスなく、忖度なく書きたかったからである。取り上げて書かなかったが、近代文学の授業はどれも興味深いものが多いのでぜひ受けてほしい。私は大学1年生の頃に受けた『日本文学史-近代』や2年次の『近代文学演習』で「テクストを読む」という行為について深く学んだことが、その後の自分の文学に対する姿勢に大きく影響した。かなり成長できた。国語的な解釈から、作者から、背景から、歴史から自由になったその先に、自分だけの読みがある。しかし自分の読みは自由にせず、厳しく突き詰めて、堂々と論じる。卒論発表会で、その姿勢を示せただろうか。言ったついでに卒論発表会の振り返りをしておくと、参加者一覧の中に同級生やブログ部の後輩など見知った名前を見つけては嬉しい気持ちになっていました。聞きにきてくださった方々、ありがとうございました。
偉そうに書いているが、私はそこら辺にいる普通の学生で、徹夜で課題をすることもあれば、バイトに追われて課題を飛ばすこともあったし、先生方にたくさんご迷惑をおかけして、その度に支えてもらった。大学は学びの場。学びたいという意志がある学生が輝ける場。この授業は大変そうだから履修しない、というのは勿体無い気がしている。履修したい授業をたくさん受けてほしい。「好き」に勝るものはないから。楽しい学生ライフを!