あれ、言葉が出てこない。
ブログを書いていて、そんなことが増えてきた。
昔はとめどなく、流れるように語彙が出てきて言葉を紡げていた。
ほぼ何も考えず、まるで友人に悩みを話している時のように滔々と感情を吐き出し、さらけ出すことが出来ていたのだ。
それは、私が負の感情に苛まれ、鬱々とした気分の中このブログを書いていたからである。
しかし、ここ最近は違う。
なぜかは知らないが、鬱屈とした日々からは少し離れた日常を送っている。
そう、元気になってしまったのだ。
嬉しい!ピース!と言いたいところだが、なかなか素直に喜べない。
私のこのマイナス思考と吐きそうになるくらいの憂鬱が私の創作意欲の源だったからである。
文章が、書けなくなってしまった。
ここ最近のブログは、正直あまり好きではない。自分の文章はだいぶ好きな方で、前は書いているさなかでも自分の文に酔いしれることさえあったのに、今は書きながら首を傾げることが増えた。
これはいけない。本当にいけない。
小学校の頃から書くことが好きだった自分の、アイデンティティの喪失である。
ここでふと気がついた。
私、最近本読んでないな……と。
最近、というのはかなり広い範囲である。
日本文学科にいながらも、本を読むのは自分が授業で取り扱っている資料だけ。
自分が好きな本を読む機会がめっきり減ってしまっていた。
この理由に心当たりがある。私には、時間が無い。
サークル、バイト、友人との食事……それらに追われていて、めっきり自分の時間というものが減ってしまった。
朝は自動車学校、昼はバイト先の友人と、夜から朝にかけてサークルのイベント、そしてそのまま授業に向かう……なんて日もあった。ノンストップである。
過去、私を憂鬱に陥れていたのもそんな忙しすぎる毎日だったのだが、今私を元気にしているのもまた、忙殺されるような日々であった。
その中で、自分の好きな本を読む、というのはなかなか難しいことだった。
本を読もう、自分のために。ある日、ふと思ったのである。
最近、ミステリを読んでみたいと思うことが増えた。なんとなく、どんでん返しという言葉に惹かれる。どんでん返し、味わいたいな……と乗換駅の本屋を眺めて思ってみては、乗り換えのために急いで駅のホームへ向かう、なんてことをしていた。移動中に読むことが出来ればいいのかもしれないが、電車の中で本を読むと酔ってしまうことが多くて、あまり長続きしなかった。
そして私は、電子書籍に手を出してみた。
色々比較してみた結果、導入したのはhontoというサービスである。大日本印刷が手がけているなら安心だし、クーポンやアプリのUIなども魅力的だ。
さっそく、いくつか気になっていた本を買ってみた。
まず、かまど・みくのしんの「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」。
今電車広告などでよく見かける本だ。この本は、私がずっと好きで読んでいるウェブ記事シリーズを書籍化し、新たな文章を加えたものである。ずっと読みたかったから、かなり嬉しい。この本に関してはもっと沢山語りたいので、また後日ブログに残したい。
また、岩波明の「文豪はみんな、うつ」。これは、良い文章とうつ病は隣り合わせだという持論があったため、タイトルに惹かれて購入を決めた。まだ積読。
そして、恩田陸の「月の裏側」。恩田陸の名前はずっと知っていたが、作品を手に取ったことはまだ無かった。読了済。恩田陸の文章はとても好みだった。心理描写が巧みで、特に日常を描いた会話がリアルで真に迫っている。あまりにも文章が好みだったもので、せっかくの電子書籍だからと好きな文章にマーカーをひいてみたりもした。紙の書籍だとなんとなくはばかられて出来なかったことである。読み終わったあと、どうしてもこの感動を残したくて久しぶりに読書ノートを作ってみたりもした。昔作ったこともあったが、長続きした試しがないので今回こそは続けてみたい。
肝心のミステリも最近になってようやっと購入に踏み切った。児童文学の類を除いては初のミステリになると思う。いや、ホームズシリーズを読んだこともあったか、いや、途中で諦めたんだっけか……。とにかく、ほぼ未知の領域である。選んだのは、綾辻行人の「十角館の殺人」。ミステリの名作と名高いこの作品からミステリを読み始めてみたい。今まさに読んでいる途中であるが、やはり面白い。どんな展開が待っているかなかなか読めない、これは私がミステリ慣れしていないのもあるかもしれないが。
他にも東野圭吾や、気になっていたエッセイなどもポイントや図書カードを使って購入してみた。電車の中や、スキマ時間にささっと読めるのはやはり便利である。
電子書籍で物足りなさを感じるのは、紙の感触と読み進めている時に感じる本の厚み、重みくらいか。やはりそこはどうしても紙書籍が愛おしく感じる。
まだ家には大量に紙の積読がある。これも読んでいかなきゃ……、と、久しぶりに読書に前向きになっているここ最近である。
ここまで書いて、ふと思った。
書きやすさが違う。鬱々としていないのに、文章がスラスラと出てくる感覚は久しぶりだ。
良い文章に必要なのはマイナス思考ではなく、良い文章を読むこと、なのかもしれない。