本格的に寒くなってまいりまして、京都も紅葉が進んでおります。清水寺のライトアップなどは連日多くの人がつめかけているとか。しかし暑かったからなのか、綺麗には綺麗なのですが、綺麗に色づくまでもなく落ちてしまうものもあったりと、悲しいこととなっております。それでも私は今年しかいられませんので、本格的に紅葉する前の今から、色々と巡っております。京都御所、妙顕寺、泉涌寺、鞍馬寺、萬福寺、高山寺、仁和寺、安楽寺、霊鑑寺、金戒光明寺、真如堂、、
今日はその中でも知恩院のことを。
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京都に留学するにあたって、日本女子大学の方で面接があるのですが、その面接で最後このようなことを聞かれました。「勉学以外では何を京都でやりたいですか?」
私は敢えて一拍置いた上で、こう答えました。「お祭りに行きたいです。」
京都では毎日のようにお祭りを彼方此方でやっておりまして、私はそれらの6割ぐらいは行くように心がけているわけですが、こんなにお祭りがあると知ったのは、3月末に東京駅の丸善で『京都手帳』を買ってからでした。それまで私が京都のお祭りといわれて挙げられるものといえば、賀茂祭、祇園祭、時代祭、
そして『お坊さんに会いに行こう!知恩院秋のライトアップ』のプレイベントでした。
私と『お坊さんに会いに行こう!知恩院秋のライトアップ』との出会いは約6年前に遡ります。2018年10月、展覧会のため京都に降り立った私は、地下鉄の駅で出会ってしまいました。お坊さんが5人、聖観音菩薩立像バックに笑顔で跳んでいる写真付きの、『お坊さんに会いに行こう!知恩院秋のライトアップ』ポスターと。
お坊さんといえば葬式の時に色々やっていただく方という認識しかなかった私はこのポスターを見て、雷に打たれたかのような衝撃を受けました。なぜ跳んでいるのでしょうか。しかも、こんなに笑顔で。それに、バンド演奏があるとはこれ一体。抱えるイメージと全く逆路線を行くこのポスターに、イベントに、一気に興味が出てきました。
しかし、東京-京都間の往復というのは些か金がかかります。現に私もなかなかこの1年間帰れていません。2018年は、10月に行ったのだからという理由で行かせてもらえませんでした。2019年は金がかかるからという理由で、2020年からは言わずもがなです。あの衝撃的なポスターを作り出すお寺の、あの衝撃的なプレイベントに行きたい。京都に住むようなことがあれば絶対に行く。何があろうと。その願いがようやく叶ったのです。
今年度のポスターは、お坊さんが跳ねているデザインではなく、知恩院までの道がわかりやすく記されたポスターです。全体的にいやらしくない金色で、イラストも可愛らしく、四条河原名物:等間隔に並ぶカップルや、花見小路の舞妓さんなどが描かれています。火灯窓の形をした枠取りもおしゃれです。それに日本語だけでなく英語でも通り名などが書かれており、国籍問わず誰でも気軽に来て欲しいという気持ちが伝わります。一方で、衝撃の2018年バージョンにあった「はっちゃけ」と言っても良いのかもしれない何かは欠けています。もしかしたらコロナを経て落ち着いてしまったのかもしれないと思いました。しかしその認識は間違いであることを、新門をくぐった時点で思い知らされることとなります。
京都屈指の寺が空に青いレーザーを打っています。ここは千葉県浦安でしょうか。これを見た時、ああ、ようやく来れたのだなと涙が出そうでした。
チケットを購入し、中に入ります。日中と違って、山門から入るのではなく、隣にある友禅園から入ります。この頃はまだ全然紅葉しておらず、紅葉の「こ」の字はあるか程度でしたので青やピンクにライトアップしていてちょうどいいくらいでした。友禅園をぐるっと回り、山門の方へ行くと、ちょうど三味線の演奏が始まったところでした。三味線は、津軽三味線。私が三味線の中で一番好きなのが津軽三味線です。『涙そうそう』やじょんがら節を披露されておりました。
三味線の演奏が終わると、次はピアノの演奏。『東京ブギウギ』『アメイジンググレイス』、『幸せなら手を叩こう』等誰でも知っている曲が、ジャズにアレンジされ、思わず体が動いてしまいます。。ピアノを披露されていたお坊さんは手品も得意だということで、演奏の途中に披露された際には歓声が上がっておりました。
階段を登って、阿弥陀堂に行くと法話が行われていました。15分から20分という長くも短くもないちょうどよいぐらいの時間の中で、お坊さんがお話しくださいます。私は法話を聞くのが好きなため、2回連続で聴きました。話すのも職業である人によるお話は大変面白く、ついもっと聴きたいと思ってしまいます。
次に御影堂に行くと、そこにはずらっと小さな木魚が置いてありました。ここは木魚を打ちながら「南無阿弥陀仏」とお念仏を唱えてみようという場所。
木魚を叩きながら、「南無阿弥陀仏」を唱えます。この日の気温、13度。先週までの暖かさと打って変わって寒い日でした。暖房などというものはありませんから、足先から手先から、どんどん冷えていきます。しかし不思議なものです。木魚を叩いている間だけは一切寒さを感じませんでした。
再び友禅園を通って外に出ると、山門の真向かいに、お坊さんが2人待っておりました。実はこのプレイベント、スタンプラリーを行っておりまして、最初の三味線やピアノの演奏を行っていた「仰天僧侶の場」、阿弥陀堂で法話を聴く「手が絆がる場」、木魚を叩きながらお念仏を唱える「お念仏の場」、そしてお坊さんと写真が撮れたり、キッチンカーで食べ物が買える「月かげ 憩いの場」でそれぞれスタンプをいただいて、全て集めると『ポックマ』というおてつぎ運動公式キャラクターの熊が描かれたミニファイルが頂けます。私も、最後はお坊さんと写真を撮って、スタンプを貰い、ファイルを貰って帰りました。
この世は体感してみないとわからないことだらけですから、何か深く知りたい過去の人や作品があるなら、それらの生まれ育った環境を自身の中で再現する必要があると私は考えます。私はこのとおり、日本文化を追求したい人間です。日本文化を知るのであれば、いくら自身が熱心な仏教徒でないにしろ、無宗教者であるにしろ、神社仏閣及び宗教関連施設・資料は外せません。ほとんどの文化芸術は信仰に基づきます。神社仏閣を知らずに日本の文化は芸術は文学は学べないのです。あの2018年『知恩院秋のライトアップ』ポスターを見てから、私の中でお坊さんやお寺に対して感じていたハードルが一気に下がりました。あのポスターがなかったら、知恩院さんが誰でも受け入れるスタイルを前面に出してくださらなければ、今こうして飽きず、一時的ではあれども、わざわざ京都に移り住んでまで、日本人の育ててきた文化全般に目を光り輝かせてはいなかったでしょうし、近代以前の文学に目も向けていなかったでしょう。
何が言いたいのかというと、宗教施設で入りづらいかつ葬式の場であるというイメージを払拭してくださった知恩院さんには感謝しかありません。毎年通いたいです。本年度の知恩院秋のライトアップ、来月2日までとのことです。
https://www.chion-in.or.jp/special/lightup_aut/