趣味を仕事にするべきか

趣味を仕事にするべきか。はたまた趣味は趣味のままにするべきか。


ねぇ、アナタはどう思う?




***


「そうですねぇ。趣味を仕事にする。別にいいんじゃないですか?」

ズイブン簡単に言ってくれる。そりゃそうだ、アナタの人生じゃないもの。でも、この質問をして「いいんじゃない」って言ってくれたのはアナタが初めてかも。



就職活動を続ける中でたくさんの人生の先輩からご助言をいただく機会があったけれど、何度も同じことを言われたわ。

【趣味は趣味のままで楽しむのもいいんじゃない?】

【好きなことが向いていることだとは限らない。】


そうだろう、そうだろう。そうなのでしょうね。冷静に考えて……

◉自分の能力適性
◉目指す世界の門戸の開かれ具合
◉生計を立てられるか

簡単に3つあげただけでも眩暈がする。これら全てが合致するものを探さなければ……いかな楽観主義者であろうとも生きていくことが難しくなる。人生が立ち行かない。だって、ねぇ、理想は食べられないのだから。



「アナタは何をそんなにうだうだと。結局、アナタは何になりたいんです?小学校の卒業式でしたか、体育館で叫んでいたように気軽な気持ちで夢を掲げればいいじゃありませんか。」


そう?そんなに気軽に?なら言うわよ、私はエンターテイメントが創りたい!
アニメ、漫画、小説、ゲーム、演劇……あらゆるエンターテイメントが私の人生の彩で、大切な趣味。

そういったステキなものがこれから先もずっとずっと続いてほしい。他でもない私自身のために。それらがなくては息の仕方もわからない自分のような者のために。


大きな口を叩いてみたけれど自分のような者が他にも大勢いることを知っている。そしてその大勢に比べて自分が何も秀でていないことを、知っている。理解している。

畢竟、私が夢を追うことは正解ではないのだろう。だからこそ止めてくれた人が沢山いた。私が正解を選べるように親身になってくれた人がいた。


だが、正解だけが人生なのか?正解ではない人生を選ぶ贅沢が眼前にあるのに。

私とて愚か者だが考えなしの馬鹿ではない。諦めた方が時には賢明なことを実感として承知している。故に私は今まで数えきれないほどのものを諦めてきた。諦めて、諦めて。そこまでしても諦めきれなかった唯一のもの。

演劇。

ずっと好きだったもの。心の支えだったもの。人生の標としてきたもの。


「驚いた、アナタってそんなに情熱的なところがあったんですね?」

私だって知らなかった。けれど就職活動を大学の2年生から初めてほぼ3年間続ける中で30社以上落ちて、落ち続けて、それでも嫌いになんかなれなかったんだ。諦める選択肢に縋れなかったんだ。最善策も最適解も救いにならなかった。

「そう、それはよかったですね。でもそこまでして掴んだ夢の先で、それが描いた夢の通りじゃなかった時に得る失望も大きいでしょうに。恐ろしいとは思わないのですか?」

なら、遠くから眺めていれば失望しないと?夢は夢のままでおいておけば綺麗な幻想として今後も愛せると?

それこそ幻想だ。近くにいようと遠くにいようと失望する時はあるさ。それならば観客としてではなく当事者として失望したい。そのほうが、ずっとずっと納得がいく。

妥協して選んだ正解よりも、自分で選んだ後悔のほうが幸せだと信じたいのだ。


***



そんな風にガムシャラな歩き方をずっと続けていた。エンターテイメント業界は煌びやかで、多彩で、しかしその席に座れる者は多くない。当然ながらそのレースに加わろうとするだけでも一苦労だ。


エントリーシートの内容は独創的で重厚、時には50問以上あることも。動画やイラスト……その他様々なものを制作することだってある。ナニか自分以外の技術に頼るような賢いマヤカシなんて通用しない世界だ。


それを繰り返す日々。
ひとつ不正解を貰うたびに自分の強がりが剥がれていく。


だからこそ、これが正解の道だとも、おすすめの道だとも嘯くことはできない。


それでも私はここに残したい。
いかに非合理的な選択であっても、いかに打ちひしがれようとも、徹底的に愚かな、そして自分自身に誠実な人間であることの幸福を!


その諦めの悪い足掻きの先に、私は幸運にも夢を掴むチャンスをいただいた。こんな自分にはきっと分不相応な素晴らしい機会を。



***


だからこそ、もし同じように己の夢の眩しさで目が眩みそうになっている方がいるのなら是非ともその瞼を閉じないでほしい。

瞼の裏の情景に押し込めてしまうのはあまりにも寂しい気がするから。

趣味は趣味、仕事は仕事。
それもまた温かいステキな向き合い方の一つだ。

だが一方で趣味に命をかけることだって選択の一つなのだ。理屈ではない、自分の情念に人生を賭ける。その平坦ではない逸れた旅路を選ぶ権利は、現代において幸運にも多くの人が持ち合わせている。


茨の道にこそ美しい花が咲くことを、どうか確かめてみませんか。



まどか🐧